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第8話

波の音は切なくて
1,410
2020/04/09 02:31
莉犬くん
莉犬くん
ね、さとみくん
さとみくん
さとみくん
鞄に教科書などを入れている途中、肩をトントンっと叩かれ、後ろを振り向いた。
後ろにいたのは莉犬で、思ったより背が低かった。
さとみくん
さとみくん
あっ…何?
莉犬くん
莉犬くん
ごめんね、邪魔しちゃった?
さとみくん
さとみくん
いや、大丈夫
莉犬くん
莉犬くん
この後何もなければ一緒に遊ばない?俺、暇でさ
こんな容姿で「俺」と言うのはまだ違和感を感じる。
それにこんなことを言われたのは記憶がない前のころ以来だと思う。
莉犬くん
莉犬くん
あ、予定あった?
さとみくん
さとみくん
ううん、何も無いけど……
莉犬くん
莉犬くん
ない、けど?
さとみくん
さとみくん
俺なんかでいいの……?
莉犬くん
莉犬くん
俺はさとみくんがいいなっ
莉犬くん
莉犬くん
さとみくんは俺じゃだめ?
この身長差じゃ自然と上目遣いになる。
くりっとした大きい目をへにゃっと崩し、笑った顔がふいにも『可愛い』と思ってしまった。
_何考えてんだ俺……っ
さとみくん
さとみくん
いや、莉犬が、いい………
莉犬くん
莉犬くん
ありがとう、それなら嘘でも嬉しいや
何故か悲しそうな顔をする莉犬は、無理して笑っているようだった。
さとみくん
さとみくん
…!嘘…じゃないからっ
莉犬くん
莉犬くん
……!
目を丸くしてこちらを見た。
莉犬くん
莉犬くん
ありがとうっ!
この可愛い笑顔を見たのは初めてじゃない気がした。
_________________________
莉犬くん
莉犬くん
ねぇ、さとみくん、海、行かない?
さとみくん
さとみくん
海…?
莉犬くん
莉犬くん
そう
この近くに海あるんだっけ…?
莉犬くん
莉犬くん
ちょっと歩いたところにね
無邪気な笑顔を浮かべ、俺の手をひいた


莉犬くん
莉犬くん
はいっとうちゃーく!
さとみくん
さとみくん
ほんとだ……!
目の前には白い砂浜があり、青い海があった。
まるでプライベートビーチのようだ。
莉犬くん
莉犬くん
ここ近所の人しか知らないらしいから友達とよく来てるんだよね。小さい頃から
さとみくん
さとみくん
すごい……!
莉犬くん
莉犬くん
それに今日は晴れてるからぴったりの日だね
あまりの綺麗さに立ち尽くしてしまう
莉犬くん
莉犬くん
ほら、おいで!
また手をひかれ、砂浜を歩く。
莉犬くん
莉犬くん
友達と週に一回掃除してるんだ。ほおっておくとゴミだらけだからね
さとみくん
さとみくん
へぇ………
莉犬くん
莉犬くん
あ、見てみて!綺麗なピンク色の貝殻!
莉犬の手に乗っかっていたのは、薄いピンク色の貝殻で、ほころびているところもなかった。
莉犬くん
莉犬くん
さとみくんの色だねっ
莉犬くん
莉犬くん
あ、じゃあこれさとみくんにあげるよ!
さとみくん
さとみくん
あ、ありがとう…!


しばらく眺めていると、不思議なものを見つけた。
さとみくん
さとみくん
ねぇ、莉犬
莉犬くん
莉犬くん
ん、何?
さとみくん
さとみくん
あれ、何?
その場所に指をさし、たずねた。
莉犬くん
莉犬くん
あぁ、あれ?
『あれ』というのは、木に何か看板のようなものが引っかかっていて、はしごも立てかけてあった。
子供が作る秘密基地のように、はしごや看板、滑車のようなものもあり、それは全てカラフルに塗られていた。
莉犬くん
莉犬くん
あれはね……
また、悲しそうな顔をした。
莉犬くん
莉犬くん
小さい頃ね、その掃除一緒にしてる友達4人ともう1人で作ったんだ。
さとみくん
さとみくん
もう、1人?
ふれちゃいけないのかな、とも思ったが気になってつい口にしてしまった。
莉犬くん
莉犬くん
………その子はね。急に引っ越すことになっちゃって、行き先も言わずどっか言っちゃったんだ。
その言葉と莉犬の表情が、自分の何かに引っかかった気がしてならない。
莉犬くん
莉犬くん
……………今は近くにいるみたいなんだけどね
さとみくん
さとみくん
じゃあ、会いに行けば…?
莉犬くん
莉犬くん
んー……さとみくんがもしその子だったら会いに来てほしい?
さとみくん
さとみくん
もちろん
莉犬くん
莉犬くん
そう、だよね………その子ね、親から虐待受けてたんだって
さとみくん
さとみくん
………
頭に衝撃が蘇った。
何にもぶつけてないのに痛くなった気がしてとっさにおさえる
ザザッ____ザザッ____
ほとんど一定のリズムで鳴る波の音は、何かを持ってこようとするも、戻ってしまうようで、切ない気持ちになった。
だけどその音も懐かしい気がして、こうやって誰かとここで座っているのも懐かしい気がして、
莉犬くん
莉犬くん
転校した先ではいじめられて…………
_あぁ、俺と似てるんだ。可哀想、だな………
莉犬くん
莉犬くん
…………………いろんなショックで一時的な記憶喪失?みたいなのがあったみたいで
_それもだ
ふと、莉犬が言うその友達になれないかなって、俺だったら記憶なんてなくても思い出すし、これ以上莉犬をこんな悲しそうな顔をさせたくない。
なんて、夢でも無理だ。
莉犬くん
莉犬くん
……俺たちのこと、忘れたんじゃないかなってさ
ポタッと莉犬の俯いた顔から落ちた雫を見て、手にぎゅっと力が入った。
さとみくん
さとみくん
……その子は、忘れてないよ
何を根拠にするか聞かれてもなにもないと答えよう。
だけど自分だったらそうする
莉犬くん
莉犬くん
え?
さとみくん
さとみくん
莉犬のこと大切に思ってると思うし、その記憶も戻したいって思ってるよ
莉犬くん
莉犬くん
そう、かな
さとみくん
さとみくん
俺がその子だったらそう思うよ
莉犬くん
莉犬くん
………そっか、ありがとう