後ろから神坂に話しかけられ、
別に隠す訳は無いけれど、本をバッグにしまう。
あの方法というのは、
人に好かれる方法的なやつであろう。
それを誰かに聞かれたくないから濁してる。
別に言っても俺は良いんだけどね。
ついこの前蹴られたばかりなのを思い出す。
俺ではないといけない理由があるから。
先程から中嶋の冷たい視線を感じるし、
圧がかかってたからこそ気付けた。
『俺じゃなきゃ駄目?』は、禁句である。
一度面倒臭がりの俺を殴るべきだろうか。
終始会話の意味を理解できず首を傾げていた神坂であったが、
まぁすぐ中嶋と笑っていたし。
さて俺らも。
必死に名前に戻せとうるさいが、
慣れちゃったからね。
もう当分、諦めて頂いて。
それから放課後。
各クラスの進み具合を何となく報告して、
実行委員は終わった。
つい勉強勉強で置きっぱなし。
まだどこにあるか見当がついていないし、
別に明日居なくなるわけでもない夏音だ。
余裕を持って明日渡すことにした。
少し怯えながら、壁から出てくる神坂。
確かにあいつ圧が強いから、
中嶋とはまた違う意味で怖がられるだろう。
ジェスチャーまで付けて否定してくる…
ってことは、本当にそういうわけでも無さそう。
まぁ別に、詳しく聞こうとまでは思わない。
ペラッペラの俺の人生としては、
大抵動きたくないし、大抵面倒臭い。
どっかのお二人さんの依頼は、限りなく面倒だし、
ヤケクソでやってしまったところはある。
普通なら、面倒臭いなんて聞いたら、
返事に困る筈なのに。
神坂は、面倒臭い=手伝うなのね。
しかも意気込むようにガッツポーズするなんて。
本当に、神坂白織と言う人間は、面白い。
果たして〝面白い〟という解釈であってるのかは、
分からないけれど。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!