第12話

爆弾発言。
59
2020/11/11 09:36
馬場
馬場
ねー、神坂さん。
神坂 白織
神坂 白織
は、いっ。
馬場
馬場
そのピンって中嶋とおそろ?
絵の具を頬に付けたままの馬場が、神坂に聞いた。
神坂 白織
神坂 白織
お、おそろ…!?
中嶋 紫信
中嶋 紫信
あー、ほんとだ、色違いだね。
その会話に耳を傾けた中嶋も、


神坂のピンをよーく見て頷いた。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
しかも横の髪まで。奇跡?
神坂 白織
神坂 白織
そ、それは…。
中嶋 紫信
中嶋 紫信
偶然、たまたま。白織も否定ははっきり、しっかり。誤解されるよ。
神坂 白織
神坂 白織
うん、わ、分かった。
中嶋は思ったことちゃんと言う分、


周りから怖がられやすいけど、


逆に言ってほしいと言う人間、つまり神坂には、


ピッタリな存在。


そう考えた俺の脳裏に浮かんだのは、
伊藤 汰一
伊藤 汰一
…神坂?俺もう要らなくない?
神坂 白織
神坂 白織
だだだ駄目!絶対!!
伊藤 汰一
伊藤 汰一
おぉそうか、なんかビックリ。(笑)
即答されて、俺は思わず頬が緩んだ。
中嶋 紫信
中嶋 紫信
あっったりまえでしょ気付きなさいよこの馬鹿!
伊藤 汰一
伊藤 汰一
イッテ!え、うそ、俺馬鹿??
中嶋 紫信
中嶋 紫信
最早馬場と同類よ、全く。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
待って今月一落ち込みそう。
馬場
馬場
汰一ぃ!?酷くない!?
足で俺の足に蹴りを入れる中嶋。


痛い痛い、元バレー部鍛えられていらっしゃる…。


そして今期一番落ち込む言葉。


とかふざけている瞬間だった。
神坂 白織
神坂 白織
い、伊藤くんは、渡さない…よ…。
俺のシャツの裾をぎゅっと握りしめて、


はっきりと、だが顔は床に向けて言った。


恐らく本人も爆弾発言をしたことを気付いていない。


だが聞いていた三人としては、


雷に撃たれた並の衝撃がほと走るという。


もう中嶋なんか三度見くらいしてたし。


今のは良いのだろうか??


というか皆が聞いていないかが心配すぎて見渡す俺。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
か、神坂?嬉しいよ?嬉しいんだけどね、ちょっとここだとね…
神坂 白織
神坂 白織
……はっ、わ、私、し、紫信ちゃん…!
中嶋 紫信
中嶋 紫信
あ、ここで私なのね、いや落ち着いて、深呼吸深呼吸。息吸えてないよ。
俺が落ち着かせようとしたのも、


特に意味を為すことは無く。


本人も衝動的に言ったのか、


頭が混乱しているようだった。


そして何より、


まさか自分にヘルプが来るとは思わなかった中嶋が一番焦っていた。
馬場
馬場
倒れそう。そして今物凄い賢者タイムもどきの失恋をした気がする。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
お前も落ち着けな。何言ってるか分かる?それ日本語として成り立ってる?
ババロアに関しては、見ての通り放心状態である。
神坂 白織
神坂 白織
み、皆は、聞いて…!?
伊藤 汰一
伊藤 汰一
三人だけよ。皆もおしゃべりしてるから大丈夫。うん、ごめんね。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
俺が多分野暮なこと聞いたのが悪かった。はい、作業しよ、怒られちゃう。
神坂 白織
神坂 白織
は、はい、
あ…絵の具取ってきます…!
馬場
馬場
え、じゃあ俺も…
伊藤 汰一
伊藤 汰一
馬鹿。
中嶋 紫信
中嶋 紫信
気づきなさい馬鹿。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
空気読めないから。
中嶋 紫信
中嶋 紫信
白織にデリカシー無いこと言うから。
馬場
馬場
ゥグワッ!!
恐らく全て図星で、


止めをさされたかのように倒れこむ馬場。


それをクラスメイト数人が邪魔そうに見ていた。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
はーい、作業作業~。
今日で内装は終わらせよ~。
男子
伊藤~、こっち内装終わったし看板作っとこっか~?
女子
男子に任せてられるか、
こっちも今終わったから手伝う。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
はいはい、じゃあ男子は段ボールとか材料補充よろしく。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
女子は使う絵の具やら装飾の準備して、喧嘩しない、協力する。
男子
イエスマム。
女子
はーい、伊藤おかーん。
伊藤 汰一
伊藤 汰一
誰がババアだ!!
女子
いやいや、
男子
言ってない言ってない。
中嶋 紫信
中嶋 紫信
伊藤!!サボり厳禁!
伊藤 汰一
伊藤 汰一
指示!!俺実行委員!!出してた!!
中嶋 紫信
中嶋 紫信
作業しながらやれ!
伊藤 汰一
伊藤 汰一
要領悪いから無理!!
神坂 白織
神坂 白織
伊藤くん、絵の具使う?
伊藤 汰一
伊藤 汰一
おおおお神坂。うん、貰イマス。
馬場
馬場
謎のカタコトワロタ。(笑)
ほんの少し、あの時に、


俺を必要だと、渡さないと言ってくれたことに、


何故かほっとしたような、安心感を抱いた。


だけれど、まだその正体が自分でも掴めず、


少しの疑問ともやもやが心の中に居座った。
これはもしかしたらアレなのでは…とはならず。


それは毎日現実的なことを考えていた故だった。

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