『寒いべ。中入ろう?』
「…………私は入らない、」
『なら俺も入らねぇ』
「…………ほんと、樹もの好きだよね」
『そんなつもりはねえけど。』
1年前
私は長年付き合ってた彼氏に振られた。
結婚までいくと思ってたのに。
付き合いだして
煙草吸うようになったし
お酒も飲むし
ピアスだって開けた。
そこまでさせといて
急に振るんだもん。
で、夜の街を歩いてたら
樹に声かけられて。
初対面なのに俺と付き合ってなんて言いやがった
あんた、バカ?って言ったけど
彼の家に住んでた私は
帰る家もないし、樹の家に住むようになった
『……………そんなに愛されてたんだなそいつ』
「…………重いでしょ、振った女にずっと想われるなんて」
『別に、俺は嬉しいべ。』
「振った女にずっと想われて?」
『うん。だって嫌いになったから振ったとは限らねえじゃん。』
「…………たしかに、」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!