そーちゃんはいつも予想外のことを言う。
人の事ばかり気にして自分の事はなにも言わない。
そんな人だと思っていた。
目を閉じれば思い出す。
彼の悲しげな歌声、雨に紛れない強い意思。
きらきら光る紫陽花にまみれてまるで天使みたいに。
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次の日、あなたちゃんに聞いてみた。
そーちゃんが嘘ついてるってことも有り得るし……
そんなことする奴じゃねぇって分かってんだけどイマイチ納得いかねぇんだよな
有耶無耶に答えられる。
これは信じていいのか?
鞄から王様プリンを取り出す。
プリンの蓋を開け、スプーンで食べる。
あなたちゃんは握りしめているだけで中々食べない。
顔はこわばっていて、少し俺でも怖いと感じてしまった。
何かを言いかけていたあなたちゃん。
俺にはさっぱりわからない。
ひたすら王様プリンを食べる。
何かを引きずっているのか、顔は暗いまま。
妙にそれが引っかかって嫌だ。
再びあなたちゃんの顔を見る。
涙が、目からポロポロと零れていた。
静かに綺麗に宝石みたいに。
こくりと頷き、涙を拭き取るあなたちゃん。
兄に似ているそーちゃん?
似てるから泣いてる?
よく状況が理解できない。
言葉も出なかった。
1年前はあなたちゃんは家族をみんな失って、一人ぼっちになって……
俺も何故か心が痛くなった。
あなたちゃんの気持ちが分かるわけじゃないけど似たような思いを持っているから。
最悪な、あの日を思い出すあなたちゃんは苦しそうだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。