押し付けた胸のあたりから、アラタの鼓動が聞こえる。
私は目を閉じて、心地よい鼓動を聞いていた。
すると、アラタがいきなり私をぐいっと引きはなして、私の様子をまじまじと見つめた。
そう言った途端、アラタは顔を赤くして、口に手を当てた。
照れながら言ったアラタを見ていると、私まで赤くなってしまう。
今まで、こんな風に男女の会話をしたことがなかったから、
……いまさらだけど、照れる!
二人で顔を赤くしていると、すぐそばを車が通り過ぎた。
アラタに会えたのがうれしすぎて、全然気づかなかった!
今さら、恥ずかしさでいっぱいになっていると、
アラタは、すぐそこにある近所の神社を指差した。
* * * *
日が暮れた神社には、私たち二人しかいなくて、しんとしていた。
私たちは、境内の裏に回って、石段に腰掛ける。
そう言って前を向いたアラタの横顔は、とびきり輝いていて、ずっと先の未来を見てるんだなって思った。
これまでは、そんなアラタを見るのが辛かったのに、今は心から応援できる。
アラタに見とれていると、急にアラタがこっちを向いた。
私は急に、アラタがX-BOYに選ばれたらキスする約束を思い出して、ぼっと赤くなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。