第34話

戸倉くんの応援
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2021/01/01 10:04
キャプテン
集合ー!
向こうからキャプテンの声が響いて、
私は、胸の前でギュッと拳を握る。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(とりあえず、今からは試合のことだけ考える!)
私はしっかりと前を見つめて、チームのもとへと向かった。

* * * *
佐護 ひまり
佐護 ひまり
橘先輩、今のうちにスポーツドリンク買ってきます!
橘 美鈴
わかった。早めに戻ってきてね
私は橘先輩に頭を下げて、すぐに自販機まで走り出した。
思った以上の暑さに、朝から水筒のお茶をほとんど飲んでしまって、今補充しないと最後までもたない。

自販機で買ったスポーツドリンクを抱えて、みんなのところへ戻ろうとした時だった。
戸倉 翔太
戸倉 翔太
あっ、ひまりん!
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにはユニフォーム姿の戸倉くんがいた。
戸倉 翔太
戸倉 翔太
ひまりんの試合、もうすぐだよな?
佐護 ひまり
佐護 ひまり
うん。二試合目だよ
戸倉 翔太
戸倉 翔太
先輩の試合の応援が終わったら、すぐ見に行くよ。
っていうか、終わってなくても、こっそり行く!
佐護 ひまり
佐護 ひまり
戸倉くんってば。
先輩の試合が終わってからでいいよ
そんな戸倉くんに、思わず笑顔がこぼれる。
戸倉 翔太
戸倉 翔太
俺、今日はひまりんの試合を見に来たと思ってるから。
がんばれよ!
戸倉くんは、大きな手で私の頭をぽんとやさしくたたいてから、戻っていった。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
……ありがと
その優しさが、私に力をくれる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(今の私には、こういう優しさが必要だったりするのかな)
最近、すこしずつ戸倉くんの優しさに惹かれている自分に驚く。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
……そういえば、早く戻らないと!
急いで来た道を戻ろうとすると、一瞬、体がふらついた。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(寝不足がたたってるのかな)
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(これから試合だっていうのに、しっかりしなくちゃ!)
私はスポーツドリンクのキャップを開けると、グイグイと一気に飲んだ。

* * * *
テニス部の監督
橘、佐護、がんばってこいよ!
橘 美鈴
はい!
佐護 ひまり
佐護 ひまり
はい!
監督から気合の入った声をかけてもらうと、私たちはいよいよコートへと向かった。

炎天下のコートに出たとたん、あまりの暑さにクラっとする。
緊張もあいまって、いつもよりも暑さが体にのしかかってくるみたいだった。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(なんで今日に限って、こんなに暑いんだろう)
お母さん
ひまりー!
かんばってー!
応援スタンドを見ると、お母さんとアラタのお母さんが手を振ってくれていた。
私も、二人に手を挙げてこたえる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(……去年はアラタも見に来てくれたっけ)
私たちはこれまでずっと、できる限りお互いの試合の応援にいっていた。

けど、もちろんアラタはいない。
今頃、アラタもイベントに向けてドキドキしながら準備してるのかな。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(……なんて、私が心配してなくてもいいんだ)
もう、アラタはたよりない男の子じゃない。

仲間に支えられながら、自分で道を切り拓いていく強い男になった。
そして、隣にはしっかりもので優しい杏奈さんがいてくれるんだから。
ピーッと審判の吹く笛の音がコートに響いて、一気に緊張感が高まった。

……いよいよ、始まる!

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