カフェを出てみんなと分かれてから、
私は一人でうなりながら、帰り道を歩いていた。
習い事でも、私はいろんなスポーツをやっては、すぐ飽きちゃってたけど、
アラタは、一年生から始めたスイミングと英会話を六年間やり通した。
中学校は野球部で、大活躍したわけじゃないけど、
一生懸命、練習に出てがんばっていた。
読モとして、だんだん周りから期待されたり応援されてる今、
アラタは、期待に応えようとはりきっているはず。
大きなため息をついたとたん、
いきなり後ろから声をかけられて、びくっと肩を揺らした。
振り返ると、アラタが不思議そうな顔をして私を見ている。
少し首をかしげるしぐさが、かわいい。
アラタは心配そうに私の顔をのぞき込んだけど、
私はひとつ咳払いをしてから、落ち着いた口調で切り出した。
アラタは目を輝かせている。
やばい、この表情は、アラタが何かにすごくハマってる時の顔だ。
私はあせってつづけた。
私は大きく息を吸い込んでから、覚悟を決めた。
アラタは少なからずショックだったみたいで、
しばらく私のことをじっと見ていたけど、しばらくしてポツリとつぶやいた。
読モの人たちって、オシャレして軽そうに見えるけど、
勉強がんばってる人もいるんだ。
さらに前向きな顔をして、先を歩くアラタに、私はがっくりと肩を落とした。
――第一ラウンド、私の完敗です……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。