第35話

試合開始
1,269
2021/01/02 01:15
私と橘先輩は、挨拶をしてから自分のポジションへとつく。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(たとえ優勝候補だろうと……、
絶対に負けない!
前に立つ、橘先輩の後ろ姿を見て、
今一度、気合を入れなおす。
けれど、今日の暑さは異常なまでに私を苦しめる。
少しでも気を抜くと、暑さで頭がボーっとしてしまう。
一瞬、視界が狭くなって、あわてて頭を振る。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(集中、集中!)
私は、相手側のサーブをにらむようにして待っていた。
橘 美鈴
来るよ!
相手の打ったボールが、目にも止まらぬスピードで私のエリアにくる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
はいっ!
私はすぐに反応して、ボールめがけてダッシュした、……はずだったのに。

なぜか体はいうことをきかず、
私は一歩もそこから動かずにいた。

というより、動けなかった。
目の前に暗幕がさっと下りたように、視界が真っ暗になる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(えっ……?)
私は、そのまま崩れるようにコートに倒れこんだ。
橘 美鈴
佐護!?
次第に遠のく意識の中、橘先輩がやってくるのがわかった。
橘 美鈴
大丈夫?  しっかりして!
佐護 ひまり
佐護 ひまり
先輩、ごめんなさい……
絞り出すように言ったその言葉は、ほとんど声にならなかった。

……そして、私の意識は完全に途切れた。

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