第43話

アラタのために
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2021/01/09 08:24
井川 アラタ
井川 アラタ
……僕、もう読モをやめるよ
上から降ってきたアラタの言葉に、私は目を見開いた。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
えっ?
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまりに寂しい思いをさせるなら、やめるよ
佐護 ひまり
佐護 ひまり
私ははっとして、アラタを見上げた。
井川 アラタ
井川 アラタ
僕には、
ひまりが一番大事だから
アラタは穏やかな笑顔をして、愛しそうに私の頭を撫でてくれる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
アラタ……
あんなに読モをやめてほしかったはずなのに、いざアラタに言われても、全然嬉しくなかった。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(本当は、やめたくないんだよね?)
キラキラした表情で、読モのお仕事のことを話すアラタを思い出して、私はきゅっと唇をかみしめた。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(私も、いつまでも寂しがってるだけじゃダメだ)
これ以上、私のワガママでアラタを縛っちゃいけない。
アラタを信じて、笑顔で送り出してあげないと。
私は、ぐっとアラタの胸を押して、アラタから離れる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
……アラタ、行ってきて
井川 アラタ
井川 アラタ
え?
佐護 ひまり
佐護 ひまり
アラタが、はじめてこれだと思えるものに、出会えたんでしょ?
井川 アラタ
井川 アラタ
アラタは驚きながらも、ゆっくりとうなずいた。
井川 アラタ
井川 アラタ
……うん。でも……
けれど、アラタはまだ迷いのある瞳で私を見つめている。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
アラタの本当の気持ちを、聞かせて欲しい
その言葉に押されるように、アラタはポツポツと話し始めた。
井川 アラタ
井川 アラタ
……はじめは、自分に自信をつけたくてやってた。
けど、そのうち読モの仕事がどんどん面白くなっていって……。
僕でも輝ける場所があることが、うれしかったんだ
うれしそうに話すアラタの姿を見て、
やっと私の中でなにかが吹っ切れた。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
じゃあ、早くイベントに戻らなくちゃ
井川 アラタ
井川 アラタ
でも……、
ひまりは、いいの?
私はうなずくと、アラタをまっすぐに見て言った。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
私も、ワガママ言ってごめん。
けど、これからはアラタのそばで応援していきたいって思う
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまり!
佐護 ひまり
佐護 ひまり
それに……、読モのアラタ、実は嫌いじゃない。
その、かっこよかったし?
認めたくなくて、最後の方は小さな声になってしまったけど。
井川 アラタ
井川 アラタ
ええっ!? ホントに?
私の言葉に、アラタの顔がぱっと輝いた。

悔しいけど、読モのアラタはかっこいい。
幼なじみのひいき目だけでなく、どんどんかっこよくなっていくのが、写真越しにでもわかる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(どんどん女の子のファンが増えていくのは、正直、おもしろくないけどね)

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