第42話

君がいてくれれば
1,340
2021/01/08 06:01
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまり……
アラタは、私の涙を指でそっと拭ってくれる。
井川 アラタ
井川 アラタ
ごめん……。
まさか、ひまりにそんな寂しい思いをさせてるなんて、思ってもみなかった
井川 アラタ
井川 アラタ
僕はずっと自分に自信がなかったんだ。 
美人でしっかりもののひまりと、何の取り柄もない僕がつり合わないことは、自分でもよくわかってた
佐護 ひまり
佐護 ひまり
そんな……
井川 アラタ
井川 アラタ
けど、初めて自分に自信を持てそうなものを見つけられた。
もし、X-BOYに選ばれるくらいの人気読モになれたら、その時は堂々とひまりに告白しようと思った
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(アラタが読モを頑張ってたのは……、私に告白するためだったの?)
井川 アラタ
井川 アラタ
自分を追い込むためにも、投票まではひまりに会わないでおこうって決めたんだ

アラタが私を遠ざけたのは、私が邪魔だからだと思ってた。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(アラタはこんなにも私のことを思って、頑張ってくれてたのに)
初めて知るアラタの心に胸が震える。
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまりは、そのままの僕でいいって言うけど、その言葉に甘えたくなかった。
僕は変わりたかったんだ
井川 アラタ
井川 アラタ
……けど、頑張っても、なかなかひまりに読モのことを認めてもらえなくて、あせってたのかもしれない
肩をすくめて笑ったアラタに、私は胸が痛んだ。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
アラタ、ごめんね。
私、ずっとアラタに読モをやめて欲しいと思ってた。
でも、それはアラタを認めてないとか、そういうことじゃなくて……
佐護 ひまり
佐護 ひまり
ただ、私は寂しかったんだ。
アラタがどんどん手の届かない人になって、そのうち私のことなんて忘れてしまうんだろうって
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまり……
佐護 ひまり
佐護 ひまり
かっこよくなくていいし、
すごい人にならなくてもいいの
佐護 ひまり
佐護 ひまり
……私はただ、アラタにそばにいて欲しいだけなんだよ
言いながら、ぽろぽろと涙がこぼれる。

……やっと言えた。
これまでずっとずっと、胸にしまってあった思いを。
井川 アラタ
井川 アラタ
ごめん、僕はバカだね。
自分のことに必死で、ひまりが寂しい思いをしてたことに気がつかなかったなんて
アラタはもう一度、ふわりと包み込むように抱きしめてくれる。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
アラタ……
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまりはしっかりしてるように見えるけど、ホントはすごく寂しがり屋だから
アラタの胸の中で、私は静かに涙を流した。 

アラタの匂いがする。
アラタが、ここにいる。
……これ以上、何もいらない。

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