まさかの直球な質問に、ドキっとして動けなくなる。
アラタにその話をしたことはあったけど、
どうして杏奈さんが知ってるんだろう。
静かだけれど、凛とした声には迫力があって、思わずたじろいでしまう。
けれど、はぐらかすことも許されない雰囲気に、私は仕方なく、正直な気持ちを口にした。
半分笑ってごまかした私に、
杏奈さんは真剣な表情ではっきりと告げた。
杏奈さんは一つ一つの言葉を丁寧に語った。
……心からアラタのことを信じて。
目の前の賢くて綺麗な杏奈さんを、私はただ言葉を失って見つめた。
杏奈さんは今にも泣きそうな顔をして私に訴える。
必死な表情の杏奈さんに、胸がざわつく。
杏奈さんは、本当にアラタのことを想ってるんだ。
アラタのことをいちばんわかってるのは自分だと思ってた。
けど、それは過去のアラタだ。
杏奈さんは、今、アラタのそばで一生懸命アラタを応援している。
目の前の景色が、急に色をなくしていく。
アラタが私のところにやってきたのを、ぼんやりと認識する。
ぽつっと言って、アラタから顔を背けると、帰り道へと歩き出す。
二人のやり取りを背中越しに聞きながら、私はさらに足を早めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。