第22話

杏奈さんの忠告
1,322
2020/12/15 11:15
南崎 杏奈
南崎 杏奈
私、宮原杏奈といいます。
アラタと一緒に読モをやってるんですけど、ずっとひまりさんに聞きたいことがあって
佐護 ひまり
佐護 ひまり
私に聞きたいこと……?
南崎 杏奈
南崎 杏奈
アラタが読モをやること、
ひまりさんは反対してるって、本当ですか?
佐護 ひまり
佐護 ひまり
まさかの直球な質問に、ドキっとして動けなくなる。 
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(なんで杏奈さんが……?)
アラタにその話をしたことはあったけど、
どうして杏奈さんが知ってるんだろう。
南崎 杏奈
南崎 杏奈
ひまりさんはアラタの幼なじみなんですよね?
がんばってるアラタに、どうしてそんなこと言うんですか?
佐護 ひまり
佐護 ひまり
それは……
静かだけれど、凛とした声には迫力があって、思わずたじろいでしまう。

けれど、はぐらかすことも許されない雰囲気に、私は仕方なく、正直な気持ちを口にした。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
私はアラタのことを昔からよく知ってるから……、読モみたいな派手な世界、アラタには合わないんじゃないかって。
背もそんなに高くないし、センスは普通で性格もおとなしめだし、ちょっとキャラ違うんじゃない? って
半分笑ってごまかした私に、
杏奈さんは真剣な表情ではっきりと告げた。
南崎 杏奈
南崎 杏奈
今のアラタは、ちがうと思います
佐護 ひまり
佐護 ひまり
え?
南崎 杏奈
南崎 杏奈
ひまりさんが言ってるのは、過去のことでしょう?
そんなふうにダメだって、決めつけないでください。
昔のことは知らないけど、アラタは謙虚で努力家で、すごくいいものを持ってる。 
これから絶対に、大人気の読モになるって思ってます
杏奈さんは一つ一つの言葉を丁寧に語った。
……心からアラタのことを信じて。

目の前の賢くて綺麗な杏奈さんを、私はただ言葉を失って見つめた。
南崎 杏奈
南崎 杏奈
アラタは本当に頑張っています。
ひまりさんもわかってあげてください。
今はアラタにとって、すごく大事な時だから……
杏奈さんは今にも泣きそうな顔をして私に訴える。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(どうして杏奈さんが、そんな顔をするの?)
必死な表情の杏奈さんに、胸がざわつく。
杏奈さんは、本当にアラタのことを想ってるんだ。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(……私、杏奈さんにはかなわない)
アラタのことをいちばんわかってるのは自分だと思ってた。
けど、それは過去のアラタだ。

杏奈さんは、今、アラタのそばで一生懸命アラタを応援している。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
(私は、アラタの何を見ていたんだろう)
目の前の景色が、急に色をなくしていく。
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまり! 待たせてごめん。
もう帰ろうか
アラタが私のところにやってきたのを、ぼんやりと認識する。
佐護 ひまり
佐護 ひまり
あ……
井川 アラタ
井川 アラタ
ひまり、どうかした? 
なんか顔色が悪いように見えるけど
佐護 ひまり
佐護 ひまり
ううん、大丈夫……
ぽつっと言って、アラタから顔を背けると、帰り道へと歩き出す。
井川 アラタ
井川 アラタ
杏奈、今日は本当にありがとう!
また来週!
南崎 杏奈
南崎 杏奈
うん。またね
二人のやり取りを背中越しに聞きながら、私はさらに足を早めた。

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