第14話

花山 楽
33
2021/02/07 10:26


僕は、生まれてからまだ8年しかたっていない、未熟な子供です
僕の最初の記憶、…それはないているママ


どうして泣いているかもわからなかった
そしてその時、声は聞こえていたが
僕の視界は、真っ暗だった

何か目が見えないように目隠しされているような…そんな感覚だった
自分は横たわっていて、体の一部の感覚がなかった


その時、お母さんから聞こえたセリフ
お母さん
楽、死なないで……置いてかないで…
え…?

僕は、まだ死んでないよ?
それを聞いた僕は、こんがらがった

この世にいる、生きている


それなのにママは、あたかも死んでいるように話していく
どうして…?
お母さん
この子がいなくなっては生きる意味などない…
お母さん
楽、今私もーーーー。
それから、ママの声は聞こえなかった
僕は今1人なの…?
ママはどこ?

ここは、どこなの?
ねぇ誰か話して?


そんなことを思い、戦い続けた

この目が見えない状況から、逃げようとした




数日後、目が見えた
花山 楽
ま…ま?
お医者さん
ッ……おはよう、楽くん
お医者さん
大丈夫だった?
優しくて声をかける人は、真っ白な服に優しい笑顔をしていた
それよりも、それよりも…
花山 楽
ママは?どこ?
お医者さん
大丈夫、いつか会えるからね
僕はその時信じていた
お母さんは来てくれる

迎えに…迎えに来てくれるって
花山 楽
ねぇ、ここどこぉ?
お医者さん
ここはね、病院だよ
お医者さん
あのね、楽くんは交通事故にあったの
花山 楽
こーつーじこ?
僕はその言葉を知らなかった

その時は、まだ3歳
分かるわけもなかった
お医者さん
あのね、車とぶつかっちゃったの
優しく、僕がわかるように話しかけてくれる
花山 楽
くるまと…?
お医者さん
うん、右腕を見てご覧?
そう言われ、僕は右腕を見る
そこには、肘の先からはもうない腕があった
花山 楽
ぇ……あ
僕はさらに困惑した
自分の腕がない、自分の右腕の感覚がない
不思議と不安と怖さが一気に襲ってくる
お医者さん
怖がらせてごめんね…
でも、ちゃんと今、自分に何が起こっているのかわかった方がいいから
そういって、お兄さんは僕の頭を撫でた
お医者さん
もうすぐで、大切な人が来るよ
そう言われた時、僕はママが来るんだと思った
花山 楽
ほんとに?
お医者さん
うん、きっと大切な人になるよ
………?
大切な人に「なる」?

まだ、あったことの無い人…?
花山 楽
え…ママは?!
目が覚めて初めて、大声を出した
お医者さん
………いつしか会える、さっきもそう言ったよニコッ
寂しそうに笑うお兄さんが、突然泣き出した
花山 楽
おにい…さ……
お医者さん
ごめんね、楽くんグスッ
突然謝るお兄さんに、僕は戸惑った
花山 楽
どうしたの?どこかいたいいたいなの?
純粋だった僕は、怪我でもしてるんじゃないかと真っ先にそう聞いた
お医者さん
ううん、どこも痛くないよ。
ごめんね、びっくりしたでしょw
花山 楽
大丈夫!
ガラララ



いきなり、ドアがあく
陽黄 いと
先生、この子?!
当然現れたのは、年上の人だった
多分、男…?
神ノ坂 愛梨
こら、病室では静かによ
花山 楽
全く知らないふたり……これが大切になる人?
神ノ坂 愛梨
楽くん、もう大丈夫よ
その時、頭に手が触れられそうになった
花山 楽
やっ!!バシッ
僕はそれを、反射的に避けていた
神ノ坂 愛梨
!!
怖いのね……
花山 楽
ッ……
自分で酷いことをしたと分かっていた

でも、謝れなかった
陽黄 いと
なあなあ、一緒に住もうぜ!!家族だ!!
家族…
……いい響き


父親も母親も僕は今、そばにいない
神ノ坂 愛梨
楽くん、おいで?
優しい声で言われた時、僕は不思議とさっきの怖さが無くなっていた
花山 楽
っあ……
自然と先生と呼ばれる人の腕の中にいた
安心するーーーーーーーーー。
花山 楽
ままぁ……グスッ

僕は、母親が恋しくなった










もう、いないってのに

プリ小説オーディオドラマ