僕は、生まれてからまだ8年しかたっていない、未熟な子供です
僕の最初の記憶、…それはないているママ
どうして泣いているかもわからなかった
そしてその時、声は聞こえていたが
僕の視界は、真っ暗だった
何か目が見えないように目隠しされているような…そんな感覚だった
自分は横たわっていて、体の一部の感覚がなかった
その時、お母さんから聞こえたセリフ
え…?
僕は、まだ死んでないよ?
それを聞いた僕は、こんがらがった
この世にいる、生きている
それなのにママは、あたかも死んでいるように話していく
どうして…?
それから、ママの声は聞こえなかった
僕は今1人なの…?
ママはどこ?
ここは、どこなの?
ねぇ誰か話して?
そんなことを思い、戦い続けた
この目が見えない状況から、逃げようとした
数日後、目が見えた
優しくて声をかける人は、真っ白な服に優しい笑顔をしていた
それよりも、それよりも…
僕はその時信じていた
お母さんは来てくれる
迎えに…迎えに来てくれるって
僕はその言葉を知らなかった
その時は、まだ3歳
分かるわけもなかった
優しく、僕がわかるように話しかけてくれる
そう言われ、僕は右腕を見る
そこには、肘の先からはもうない腕があった
僕はさらに困惑した
自分の腕がない、自分の右腕の感覚がない
不思議と不安と怖さが一気に襲ってくる
そういって、お兄さんは僕の頭を撫でた
そう言われた時、僕はママが来るんだと思った
………?
大切な人に「なる」?
まだ、あったことの無い人…?
目が覚めて初めて、大声を出した
寂しそうに笑うお兄さんが、突然泣き出した
突然謝るお兄さんに、僕は戸惑った
純粋だった僕は、怪我でもしてるんじゃないかと真っ先にそう聞いた
ガラララ
いきなり、ドアがあく
当然現れたのは、年上の人だった
多分、男…?
全く知らないふたり……これが大切になる人?
その時、頭に手が触れられそうになった
僕はそれを、反射的に避けていた
自分で酷いことをしたと分かっていた
でも、謝れなかった
家族…
……いい響き
父親も母親も僕は今、そばにいない
優しい声で言われた時、僕は不思議とさっきの怖さが無くなっていた
自然と先生と呼ばれる人の腕の中にいた
安心するーーーーーーーーー。
僕は、母親が恋しくなった
もう、いないってのに
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。