第12話

ニンゲンとエルフ
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2020/08/06 00:00


エルフの森で潤と約束をしてから、25年の月日が経った。


翔side

俺は、あの時の宣言通り政治家になった。

「エルフとニンゲンは繋がり合うべき」というテーマで論文を書き、人々の間でも話題を呼んだ。

始めは批判や批評などが来たものの、徐々に賛成派が出てきて、今ではニンゲンのほぼ全員が俺の意見に賛成なのだそうだ。

しかし…肝心なところは王様を納得させること。

周りに流されないというところが、あそこまで上り詰めた秘訣なのだろう。

エルフを毛嫌いする王様を、どう説得すればいいか……

それは今考え中だが…何としてでも納得させ、エルフと繋がり合う権利を得たい。

エルフと恋をする権利を得たい。

大学の後輩の田村は、「なぜ先輩は、そんなにエルフと俺らニンゲンを繋ぎたいんですか?」と聞いてきた。

こう返してやったよ。「小さい頃出会ったエルフに、恩返しをしたいからだ」と。

潤……今でも名前を呼ぶと会いたくなる。

もし俺の壮大な野望が叶ったら、政治家をやめて潤を守ることに徹底する。

俺は半エルフとはいえ魔法などはまだまだ使えない。

いつか…完全なエルフになったら魔法をどんどん覚え、やっていた剣術を上手く使い、潤の身を守る術を身につける。

……これこそが、本当の俺の夢なのかもしれないな……



潤side

翔くんと離れ離れになって25年…

前の新聞で、政治家の翔くんが写真で写っていた。

ボクはこの時、つい涙が出た。

立派な大人に成長した翔くんが見れたこと、自分の願いを叶えるために必死に頑張っていること。

有言実行…ってやつ?

それに噂では、かなり賛成派が増えていっているようだ!

エルフの森では、それぞれの村の村長が集まり、ニンゲンと繋がり合うべきか、繋がり合わないべきか、という議論が行われた。

その結果…「ニンゲンと互いを認め合い、繋がり合おう」という結果になった。

ボクは、号泣してしまった。もちろん嬉し涙だ。

でも……問題は…ニンゲン側。

王様は翔くんの意見に反対してるというし…説得させることができるのかな?」

なんで、あの王様はエルフと繋がり合おうとしないのかな?

翔くん、頑張って!応援してるからね!


翔side


ついに…ついに今日、王様の所へ行く時が来た。

これまでは長かった、世間に振り回されたり、家族と話し合ったり、裁判沙汰になりかけたり。

でも智くんに、雅紀に、ニノに、潤に会うためならば痛くも痒くもなかった。

そしてこの大舞台。俺が話すことで王様を説得させることができれば、これからのエルフとニンゲンの関係、繋がりが変わる。

絶対に、ヘマを犯してはならない。

大丈夫、俺には潤も智くんもニノも雅紀も、ニンゲンの皆さんという強い味方がいる。

叶えてみせる、俺の野望を!

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