召し…使い?
ニジョウが、さも私の鈍さに呆れたように
私の言葉を遮って言い放つ
ニジョウの透き通るような視線が私に向けられ
それと同時に
カチャリ
と、音がして
私の鎖がはずされる
…な、んで
素直に
頷いていい言葉なのか、わからない
私はオークションで売られて
てっきりどこの誰かもわからない奴の
下敷きにでもなるのかと思ってたのに
こいつも同じだと
思ってたのに
こいつは私に仕事をくれると言った?
働いていいと
笑ってもいいと
教えてもいいと思った
こんな名前
あのときの事を思い出して
死ぬくらい嫌だと思ったのに
この人が呼んでくれたら
少しは変わるんじゃないかって
その時のニジョウは
さっきからの冷たい視線がうそみたいに
穏やかにわたしを見つめて笑っていた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!