卒業の次は、入学。
出会いの次は、別れ。
これらは、生きていく上で避けられないものだ。
先輩が卒業してから、数週間ほど経った。
俺が好きだった先輩。
2つ学年が離れていて、
学校一のイケメンで。
入学式の時、道に迷った俺を助けてくれた。
偶然部活も一緒になり、関わる機会が増えたんだっけ。
そっからだ。先輩のことを好きになり始めたのは。
あのくしゃっとした笑顔とか、
意地悪なのに実はすっごく優しいとことか、
イタズラが成功した時の嬉しそうな顔とか…
告白、すればよかったかな。
失敗したところで、もう二度と先輩と会う機会はない。
気まずくはならない。
でも、やっぱり無理だ。
卒業式の時、先輩は沢山の女子に囲まれていた。
第二ボタンをせがまれ、プレゼントを受け取り、告白をされ。
とても話しかけられなかった。
考えていても仕方ない。
押し寄せる後悔の波をたちきり、
伸びをする。
そのとき
ぴーんぽーん…
間抜けなチャイム音が部屋に響いた。
何か届けものあったっけ?
疑問を抱きつつ玄関のドアを開けた。
「え?」
思わず声がでる。
そこには、居るはずのない先輩。
走ってきたのだろうか、息切れしていて。
呼吸を落ち着けた先輩が、俺を見据える。
『俺、さ。ずっとお前のことが好きだった。
性別とか、ぶっちゃけどうでもよくて。
だから、俺と付き合ってください…!』
返事なんか、1つに決まってる。
「こんな俺でよければ、是非。」
さぁ先輩?
青春なんて甘酸っぱいモノとはサヨナラしましょうか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!