サグワが、新居に来た。
少し前にデカキンさんと一緒に来たことがある為、
初めてではない。
今年は色々あって忙しかったから、
こうやってゆっくりするのも久しぶりだ。
2人で度数の低いアルコールを飲みながら、
夕日を眺める。
俺は煙草をやめたから、
サグワの煙草の匂いが
少しばかり煙たくて。
ふと、最近あった出来事を思い出し
泣きそうになる。
親しい人との、別れ。
この歳になって、こんなに引きずるような
出来事があるとは。
もう、立ち直れたと思ったのに。
でも、やっぱり。
少しばかり、寂しく感じた。
寂しさを紛らわすように、
アルコールを煽る。
ふっと、サグワが此方を向いた。
大量に呑んだのか、
心做しか頬が赤みを帯びている。
泣きそうな俺に気がついたのか、へらりと笑った。
あぁ
それだけで嬉しくなる俺は、
どれだけ単純なのか。
その約束ごと
閉じ込めるように、
指を絡め、キスをする。
鼻を掠める煙草の香り。
その香りに、また涙が零れた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!