嗚呼。
好きな人の幸せを願えない俺は、
最低なのだろう。
ならば最低な俺が
君を好きでいる事は、許されるだろうか。
きっと許されないのだろう。
ふっと、煙草に火をつける。
甘いことが売りのモノだから、そこまで好きな味ではない。
昔君が、俺が吸っているからといい吸い始め、
揃いの銘柄がいいとせがまれ、
仕方なく揃えた時のままだ。
あの時から、1度も銘柄を変えていない。
別れた後も、君の面影を探すように
吸い続けている。
夕暮れ時、シャンメリー片手に
慣れない煙草を吸う君。
偶に煙でむせたりするその姿が、
とても愛おしかった。
嗚呼、もう一度あの時に戻れたなら。
テーブルに残されたギムレットが、
夕日に照らされて輝いていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!