その後も気まずいまま電話を続けてしまった
なんか私が暇電しちゃった人みたいじゃん ...
リノも忙しいのに ...
送られたと言ったらまずいことになりそうだ
焦りとか恐怖を超えて逆に冷静になってくる
電話を切って担当者との打合せを始めた
あの刃物のことが頭から離れない .
夜は新人賞受賞のお祝いで飲み会に行った
店を出ると 21:00 を過ぎていた
早歩きで寒い夜道を歩いていた
早く家に帰って好きな映画でも見よう .
すると 、後ろに気配を感じる
ずっと何かがついてきている感じ .
街灯の少ないこの通りは真っ暗で
振り返っても何も見えやしない
曲がり道が多いし 、隠れようとすれば隠れられる
さらに速く歩いて鞄の肩紐を握りしめた
頭にチラつく刃物の残像 .
こんな小説みたいなことが起こる訳がない
あともう少しで家だ ,
もう何も考えないようにしよう 、と
角を曲がったところにマンションが見えるはずだった
マンションの前に人影が見える
つまらなそうに立っているリノだった
一回も振り返らず 、ぱたぱたと走った
絶対に誰かにつけられている .
背中の目がそう言っていた
息を止めていたみたいで急に酸素が入ってくる
今日は色々あった .
あまりの怖さでリノに抱きついた
というよりはしなだれかかったという方が正しいか
私の束になった前髪をすっと割いてくれる
リノは私の背中を優しくさすった
.
Next .
この展開は自信作 (( 怖
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。