授賞式の会場に到着してスタイリング室に通された
今日着る予定のドレスがかかっている
メイクとセットをしてもらった後 、
リクスとスタイリストさんには席を外してもらって
フィッティングルームのカーテンを閉めた
レッドカーペットみたいな赤で
胸まで覆う布しかない .
ダイエットすればよかった ... と思いながら
胸元のガーネットのネックレスに手をやった
今着ているラフなスーツのジャケットを脱いで
ブラウスのボタンに手をつけた瞬間 、
スタイリング室のドアが開く音がした
反射的に振り返るとカーテンがものすごい勢いで開く
突如目の前に現れた人にびっくりした
同じ会社の作家さんだった .
同じく推理小説を書いている男の人気作家さん ,
貴方の評価より世間の評価が大切なんです .
そう言い返そうとした瞬間 、
壁に追い詰められて首を片手で掴まれた
喉から短く息を吐く .
私はどんな顔で彼を見ていただろう ,
1番下まで堕落した人間の表情でそう呟いた
私の首を掴む手に力が入る
恐怖でドレスをシワができるほど握った
次の瞬間 、カーテンが開いて警察の制服が見えた
鈍い音がして目の前の男の人が膝から崩れ落ちる
背中から蹴りを入れられたようだった
私はそのまま壁伝いにしゃがんだ
リノは腕時計を見ながら手錠をかける
「 10時35分脅迫罪で現行犯逮捕をする 」
「 黙秘権がある 、不利な証言はしなくていい 」
そう言って床に転がした
Next .
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!