放課後、急いで家に帰り、前日から用意してあった服に着替えて駅前に向かった。
普段はあまり来ない駅前だけど、さすがクリスマスイブ。
街はクリスマス一色に染まっていて、どこを見渡しても手を繋いで歩くカップルや家族ばかり。
そして、街のシンボルのように大きなクリスマスツリーがそびえ立っている。
「久保田さん!」
高瀬先生が手を振って走ってきた。
少しは楽しみにしてくれてたのかな、とほっとする。
高瀬先生の私服は学校でも見るけど、やっぱりプライベートだと違う。スーツではないが、フォーマルな感じでオシャレに着こなしている。
また一段とカッコよくて、大人な落ち着きのある男性だ。
「で、どこに行きたいんだっけ?」
今日は私が誘ったということもあり、私が行く場所を決めた。
「まずは、向こうの通りで色々食べ歩きでもしようかと思ったんですが……」
向こうの通り…に行けば、例のあのビラの店がある。
散策していれば、何かあるかなと少し期待している自分がいた。
「よし、行こうか。」
私たちはあの店がある通りの方へ歩く。
この辺りに学校の人がいることはあるだろうけど、たくさんのカップルで賑わっているし、マスクもつけているからバレることは無いだろう。
そんなことを考えていると、例の店が見えてきた。
相談なんかしてないし、スルーされるだろうと思っていると、サンタクロースの衣装を着たお姉さんが話しかけてきた。
「カップルですか!?」
いきなり、そんなことを聞いてくる。
高瀬先生も驚いて、少しフリーズしちゃってるし。
「ち、違いますけど。」
高瀬先生はそう言った。
少し胸がチクリとする。
事実なのに……自分でも分かってるのに。
「そうなんですか!じゃあ、これからってとこですかね!」
お姉さんは勝手にそう決めつける。
そうだといいんだけどね……違うんだなぁ。
「そんなお二人にはとっておきのプランをご用意しております!さあ、中へ!」
強引に中へ入れられる。
暖房が効いてて温かい。
外は寒かったからラッキーかな。
「では、このようなプランはいかがでしょうか?」
さっきのお姉さんとは入れ替わり、男性がある紙を見せてきた。
「聖夜の星へ?」
私は思わず、声に出して読んでしまった。
「はい。今日は星がよく見えましてね。ここから徒歩10分の穴場ですよ。今日のデートの締めくくりにはピッタリです。」
どうやらこの店はクリスマスを利用して、いわゆる友達以上恋人未満やカップルの二人を見つけてはデートスポットを提案しているらしい。
「あ、ありがとうございます。」
高瀬先生がその紙を受け取り、私たちはその店を出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。