「では、入ってきてもらおう。」
みんなが教室のドアを見る。
そこからは、前田先生とは違ってスリムかつフレッシュな男性が入ってきた。
年齢は……20代くらいだろうか。
「今日から二週間、教育実習生としてこの2年1組に入ってもらう。」
教育実習生……か。
「皆さん初めまして、こんにちは。教育実習生の高瀬 雄一です。短い間ですが、よろしくお願いします。」
クラスのあちこちでは女子の「イケメンじゃない?」なんて声が聞こえてくる。
でも、割とカッコイイかも。
「顔は整ってるよね。」
梨乃もそう言った。
「いやぁ……教育実習ってのは、俺らの時代もあったなぁ!懐かしい!やっぱりねぇ、教育実習は楽しかったぞ!そして、青春のようだった!」
教育実習生の横で語り出す前田先生。
これには高瀬先生も少し困惑していた。
「先生、昔話はいいって。」
クラスの男子がそう突っ込む。
「誰が昔話か!たった30年前の話だぞ?」
「30年"も"経ってるんじゃないですか!」
"も"を強調して言い返す男子たち。
「楽しそうなクラスですね。」
高瀬先生がそう微笑んだ。
これが高瀬先生……として二週間の教育実習の始まりだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!