「ごめん。久保田さんとは付き合えない。」
高瀬先生からはそんな言葉が返ってきた。
分かってた……よ。
分かってたけど、辛いよ。
高瀬先生があの時……あの放課後の時間にこの言葉から私を救ってくれた。
二度も聞きたくなかったよ。
高瀬先生からこの言葉は聞きたくなかった。
一ミリでも期待した自分が悪いのかな。
「そう…ですよね。困らせてごめんなさい。高瀬先生、この二週間は色々とありがとうございました。」
そうお礼を告げて、その場を立ち去ろうとしたその時。
「待って!」
高瀬先生に腕を掴まれた。
こんなことされたら、期待してしまうだけなのに。
「まだ続きがある。」
続きとは話の続きだろうか?
よく考えてみれば、高瀬先生の話を遮って私が喋ってしまったような気がする。
「今は久保田さんとは付き合えない。でも、俺が教師になって、久保田さんが卒業して……その時ももし久保田さんがまだ俺の事を好きでいてくれるなら、俺は久保田さんの隣にいたい。」
私は耳を疑った。
でも、目の前には真剣な顔付きの高瀬先生がいる。
「もし、二年後も好きでいてくれるなら久保田さんの気持ちに応えたい。」
「もちろんですっ……」
私の目からは涙が溢れ、頬を伝った。
「卒業したら、迎えに行くから。」
「はい、待ってます。」
夜空を見上げれば、聖夜に浮かぶ星々が見える。
また二年後に高瀬先生とこの夜空が見えますように。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。