「高瀬先生!」
放課後、私は理科室に向かう高瀬先生を呼び止める。
「久保田さん?」
「せ、先生……」
お礼、言わなくちゃ。
「今日の朝は本当にありがとうございました!」
私は頭を深く下げる。
すると、慌てた様子で高瀬先生が頭を上げるように言った。
「久保田さんの優しさに感激したよ。未来が明るく見えた気がした。」
「高瀬先生……理科、教えて欲しいんですけど。」
私はそう言ってカバンの中から問題集を取り出す。
「でも、俺より前田先生の方が……」
「先生がいいんです。」
今まであまり恋愛経験もなかったのに、何故か先生の前だと自分の意思がしっかりと伝えられる。
それに落ち着くし、一緒にいる時間はとても楽しい。
不思議だ。
「じゃあ……少しだけ。」
それから、私たちは冷たい理科室の椅子に座り、問題集を解いた。
「先生、ありがとうございました。」
「こちらこそ。生徒に教えるいい勉強になったよ。」
高瀬先生といる時間はあっという間に過ぎてしまう。
そして、時間に比例するかのように私が高瀬先生に寄せている想いもどんどん……大きくなっていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。