お昼休憩の時間。
私は梨乃を中央階段に誘う。
私たちの学校には中央階段という階段があり、天気のいい日はここで昼食をとる生徒もいる。
「いただきまーす」
梨乃は弁当を食べ始めた。
今日は梨乃に相談がある。
ちゃんと話さなければ。
「梨乃、話があるんだけど。」
「栞里からここに誘うなんて珍しいもんね。どうかした?」
さすが私の良き理解者。
何となくは勘づかれているかもしれない。
「梨乃。その人ともっと長く一緒に居たいとか、話したいとか思うって……先輩の時と同じ気持ちだよね?」
「……そうだと思うよ。誰だかわかんないけど、新しい恋が見つかってよかった。ずっと先輩こと、忘れられないんじゃないかって心配してたんだから。」
梨乃は相手が誰なのかは聞いて来なかった。
「栞里、悔いのないように……ね。」
「うん。」
きっと、梨乃は薄々気づいているのであろう。
それでも聞かないのは梨乃の優しさ。
私はその優しさに暖かく心を包まれる。
悔いのないように……か。
二週間なんてあっという間に過ぎるからなぁ。
それにしても、私は厄介な立場にいる人を好きになってしまったようだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。