んーと…どこから思い出そうか…
じゃあまずは家族でも思い出そう。
父さんと母さんと双子のお兄ちゃんの4人家族だったっけな。父さんの名前は…思い出したくないな。母さんは美麗でお兄ちゃんは翔だったかな…。
翔と母さんは大好きだったなぁ。
父さんは別。
僕と翔を虐待して、母さんを奴隷の様に扱う毎日。
「俺のおかげでお前等が生かされてんだ。」
毎日言い続けて聞き飽きた言の葉。
父さんはその言葉を頼りに僕等を肉体的に、精神的に痛め続けていた。
世間の前では良い顔してさ。テキトーに並べた綺麗事を言って堂々としてたっけ。
どっかの社長だからって何様なんだよ。
金と自分に溺れ狂ってた屑のくせして。
でも…そんな酷くイカれてる毎日は終わりを告げたっけ。
確か…今から3年前の12歳の頃。暑い夏の日。蝉の声が鳴り止まぬ五月蝿い炎天下での事。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!