平野紫耀side
吉沢さんはあなたの手を掴んだ
あなたはびっくりした顔で吉沢さんと話しだした
何を話してるのかわからないけど楽しそうに笑って話す2人の姿にどうしようもなく腹が立ってしまう…
普段なら電話してこっちだよ、って言えば済むのにわざわざクラクションを鳴らして俺、いますよアピールをした
またあなたはクラクションの音にびっくりして一度キョロキョロした後俺の車だとわかったみたいで、
いつも俺に見せる顔をしてくれた…って思ったのに…
吉沢さんがまたあなたの手を引いて何か話してキャップをあなたに被せた
多分、あなたがキャップを忘れてそれで渡しにきてくれたとかそんな感じなんだろう。
別にそれはいい。それはいいんだけど!!!なんでわざわざ手を繋いで止めるの?!!!
腕掴めばよくない??!!
しかも!!!!キャップ被せたあと頭撫でましたよね?!??
なにしてくれてんの?!!!
しかもあなたはあなたで照れちゃってるし!!!
落ち着いていたはずの感情が再びふつふつと出てきてしまう。
あなたは吉沢さんに手を振りながらやっとこっちに来た
俺も車を降りてあなたを出迎える
助手席のドアを開けると、
あなたが乗り込んだのを確認して扉を閉め、なんとなくさっきまであなたがいた方を見れば吉沢さんがまだ立っていてこちらを見ていた
掛けていたサングラスを外して、一礼すれば向こうも同様に一礼してきた
すぐに運転席に戻れば吉沢さんに見せていたキラキラした笑顔じゃなくて不安そうにこちらを見るあなた
はあ、こんなつもりじゃなかったんだけど…。
とりあえず車を出してスーパーに向かった
少し気まずい車内にはあなたの好きな洋楽が流れてる
時折、横からあなたの視線を感じる
赤信号になって止まったタイミングで名前だけ呼んだ
なんとなく、あなたの顔を見れなくてそのまま前に止まっている車を眺める
さっきの光景がやけに頭にこびり付いて離れない
左手をハンドルから離してあなたの方に伸ばせば遠慮がちにあなたが手を繋いでくれた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。