シャside
部屋に入りその場に座り込む。
怒りを拳に込め、床を殴る。
ドンッと大きな音を立てるがそれ以外は静寂に包まれていた。
スマ兄の顔が頭から離れない。
白々しい嘘をつくあの顔が。
何かを恐れているように。
全てを隠すようにつかれる嘘に。
俺は怒っていた。
静寂な部屋に俺の声が響く。
俺にさえ何も言ってくれない。
俺だって、お金を稼ぎたいからしたくもない勉強して大学行って、いい所に就職しようと頑張っているのに。
スマ兄の負担を少しでも減らそうとしているのに。
俺も大人になったのに。
それをスマ兄はわかってるはずなのに。
独りで全部やってしまう。
抱えてしまう。
なんでなんだよ。
悔し涙が出る。
俺の怒りは収まることはなかった。
✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!