第28話

卒業___⛄️💙
2,370
2021/10/16 14:27





「結局ここじゃん」

翔太「お前が行きたいって言ったんだろ」

「そうだけどさ、」



高校3年間のうちの最後の大イベント


卒業式。


それなのに、俺たちはまたこの屋上にいた


雑に置かれた椅子を並べて


その上に寝転び出すそいつ



翔太「俺の1個ぐらいとっとけよ」

「翔太は床でいいの」

翔太「ひでぇ」



そんな俺の反応に


何が面白いのか、ケラケラと笑う



「翔太、」



急に名前を呼ばれ


振り向けば俺にスマホを向けて


シャッターを切る



翔太「なにしてんの」

「写真撮影じゃん」

翔太「なんで」

「卒業式だよ、1枚ぐらいさ」



いや、だとしても


普通ツーショットだろ、


なんで、俺単体で撮るんだよ



翔太「貸せ」

「あ、ちょっと、!」



そいつのスマホを奪って


ぎこちない握り方のままシャッターを切る



「あー、前髪崩れたままじゃん」

翔太「女子みたいなこと言ってんじゃねぇよ」

「盛れてないし、」



らしくないことを連発するから


不満そうにしながら写真を眺めるそいつを見て


お腹を抱えて笑った


そんな俺の隣に降りてきて


肩を並べて地べたに座る



「人って死んだらどこに行くんだろ、」

翔太「だいたい雲の上だろ」

「やっぱり、翔太はユーモアがないよ」

翔太「は?」



バカにしてんのか、


隣にいるそいつの横顔を見れば


1年前、この場所で、こいつと会った時と


同じような顔をしてた



翔太「なに、死にたいの?」

「そうだよって言ったら、あの時みたいに助けてくれる?」

翔太「知らね」



それから、あの時と同じように


目をキラキラさせる


でも、今日はあの時みたいに


知らないくせに、なんて言えないんだろう


わけも分からずにボロボロと泣き始めるから


仕方なく手を握った



翔太「だから言ってんじゃん、今死なれると俺が迷惑だって、」



そんな手を弱すぎる力で


でも、きちんと握り返してくる



翔太「俺がいない時にしろ、バカ」



きっと、2人でこうやって屋上に来るのも


今日が最後だ


明日から、お互いのことなんて


すっかり忘れて生きていくんだ



「死にたくなったらここに来るから、」

翔太「勝手にしろ」



今度会う時は、


次にこいつが死にたくなった時だ。




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