インターホンがなって
ドアを開ければ、ひーくんが立ってた
照「よ!」
「どうしたの、急に」
照「自分の家帰るより、あなたの家の方が近かったから」
「いや、理由になってないし」
なんて言いながらも
差し入れの入った紙袋を見せられれば
許さざるを得ない
自分の家かのように玄関を通り
リビングに入っていく
ソファーに並んで何をするもなく
ただ、テレビを眺めるだけ
「おかわり、いる?」
空いたグラスを見てそう聞く
照「じゃあ貰う」
「りょーかい」
それから、キッチンに行って
氷を割り、お酒を注ぐ
そんな私の名前をひーくんが呼ぶ
照「あなたーー!!」
「なにー?」
照「ふっかから電話来てるー!」
コップを2つ持ってソファーに戻り
急いで、電話に出る
「もしもーし」
___辰哉「あなた、?」
「そうだよ」
___辰哉「今家いる?」
「いるよ」
この流れ的に家に来るんだろう
この人も、
「ひーくんもいるからさ、ふっかもおいでよ」
___辰哉「あ、なに、照いんの?」
「うん、なんか来た」
照「おい、なんかって言うな」
「だってアポなしで来てんじゃん、ふっかの方がよっぽど偉いよ」
照「うわ、言い方」
なんて、横に座る彼は
私の作ったお酒を飲みながらケラケラと笑う
かと思えば、やけに静かだった電話越しから
また声がする
___辰哉「ごめん、やっぱ今度にするわ」
「え、なんで。来なよ。」
___辰哉「じゃあ、」
「え、ちょ!」
それから、ブツンと電話が切れる
なんだよ、自分から聞いてきたくせに
それなら、お菓子も全部食べてやる
なんて思う私の横で
照「俺帰ろうかっ、?」
なんて、何が面白いのか笑いながら
私に言う
「え、なんで」
照「いやっ、だってめっちゃ嫉妬してたじゃん」
「え?」
照「ふっか」
嫉妬?
何に?
理解出来てない私を見て、
いつもと同じ顔で笑う
照「あいつお前のこと大好きだからなぁ、」
独り言なのか、
私に言ってるのか、
分からないような曖昧なセリフを
また、視線をテレビに戻して
酔いを回しながら、
ひーくんは言った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。