第30話

愛おしいままで___⛄️💙
2,334
2021/10/24 14:29





卒業してどれだけだっただろうか


適当に見返した


過去のカメラロールは


制服姿のお前で埋まっていた


バカみたいな顔も、


子供みたいな顔も、


拗ねた顔も、


自分でも呆れるくらい、


お前しかいなかった


今頃何してるだろうか、


また、疲れた、なんて泣いてる姿を


思い浮かべては


懐かしさからなのか、笑えてくる


連絡先は、卒業式の日になっても


交換しなかった。


それは、次会う時も、


あの屋上にするため。


だと、勝手に思っている


少し視線を上げた先にあった時計に


慌てて食堂から出る


授業中も、頭から離れないお前に


思わずため息が出た


まっすぐ帰るはずの道の途中に


あの屋上を入れ込む


相変わらず、重く、うるさい、ドアを開ければ


ちゃんと居た。



翔太「おい、」



振り向いた顔は少し大人びていた



「遅いよ」



生意気なところも、変わらない



翔太「ほら、俺が来たんだから、降りろ」

「生意気だ」

翔太「どっちがだよ、」



トン、と段から降りた後


何も言わずに、俺の体に抱きついてくる



翔太「いつも、ここに来てんの、?」

「ううん、今日久しぶりに来た、」

翔太「なにそれ、」



そんなこと言われたら、


もう笑うしかなくて、


なんだか、おかしくなって


ケラケラと笑った



「私が死んだらさ、泣く?」



俺の腕の中で、


そんなことを言い出すお前



翔太「知らねーよ」

「知っててよ」

翔太「お前はどうなの、」

「なにが、」

翔太「俺が死んだら、泣くの?」



ふざけて言ったつもりが


急に黙り込む


かと思えば、抱きしめる力が


明らかに強くなった



「泣くよ、誰よりも」

翔太「あっそ、」

「だから、死なないでね」

翔太「お前よりは多く生きてるよ」



適当に返した言葉に対して


お前は嬉しそうに笑った


大人びたのは見た目だけだった


それ以外は、何も、


変わってなかった。


出会ったあの日から、


笑った顔も、泣いた顔も、


なにも。


ぐしゃぐしゃに頭を撫でれば


髪が崩れる、なんて言って


俺をポカポカと叩いた




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