第26話

出会い___⛄️💙
2,458
2021/09/26 17:24





俺らの出会い


それは高校の屋上だった。


今でも気持ち悪い出会い方だったなと思う。


高3の春、新学期が始まったばかりの時だった


本校舎の屋上は人が溜まるけど


別棟の屋上は意外と穴場なんだ


いつも通り、重いドアを開けた先に


お前が立ってた。


バランスを崩せば、下に真っ逆さま


なんてぐらいに端の場所に



翔太「なに?自殺?」



長い髪をなびかせながら


ゆっくりと振り向く



「そうだよ」



当たり前のように答えるから


つい、鼻で笑ってしまった



翔太「飛び降りは痛いだろ」

「まるで、飛び降りたことあるような言い方するのね」



以外にも


きちんとした答えが返ってきたから


もう一度、そいつの方に視線を向ける


その時、初めて顔が見えた



翔太「お前冗談知らないの?」

「知らないよ」

翔太「うざ」



こんな、顔も名前も知らないやつ


自殺でも、何でも


勝手にしとけばいい。


しょうもない。



翔太「てか、なんで死ぬの?」



ただの興味だ。


理由と聞いたところで


止める気も、勧める気もない



翔太「いじめとか?」

「違うよ」

翔太「じゃあなんだよ」



うるさい風の音の間に


そいつの声が混じる



「疲れた」



正直腹が立った


声を出して笑ってやろうかと思った



翔太「そんな理由で死んでたら、とっくに人類滅亡してるから」



鼻で笑いながら


そう吐き捨ててやる。


疲れた、ごときで死のうとしやがって



「何も知らないくせに」

翔太「は?」

「お前に私の何がわかんのっ、!!」



何もわかんねぇし、知らねぇよ


お前の存在ですら、今知ったんだから


なのに、振り向いたそいつの顔は


泣いてた。


全部意味わかんねぇと思った。


そいつの近くまで行って、目の前に立つ



翔太「どうせ、死ぬ勇気なんて無いんだろ」



まだ、目をきらきらさせながら


俺を睨みつけるそいつ



翔太「手伝おうか?」



返事はない。


そいつの制服に触れて


体重がかかった瞬間


そのまま抱き寄せた。


おかげで仲良く屋上に倒れ込む



翔太「ごめんけど、今死なれると、俺が面倒臭いんだわ。また今度にしろ」



息を切らしたそいつに


そう言いながらも、腕に力を入れた


それから、卒業まで、


何故か、俺たちはずっと一緒にいた。


これが俺らの出会い。


やっぱり、相当気持ち悪いと思った。







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