天慈組
あたしは天慈組の事務所の部屋にいた。
和室で、特になにもない。
なにも監禁されてる訳でもない。
別に出ることはできる。
でも……
足が動かない。
外に出ようとしたいのだが
なんでだろ……
あ、そうか。
あたし、兄と戦っていたのか……
ガラッ
兄が部屋に入ってきた。
兄はあたしの隣に座っていた。
そしてあたしの髪の毛を触る。
あたしが左馬刻さんの名前を言うと、殴られそうで怖かった。
大して害がなかったから…
今、良ければそれでいいと思ってる。
兄は相当憎んでる。
何故なのか……
過去ーーーーーー
ビルの火災事件 爽秀サイド
俺は火の海の中、父 螺鐘と会っていた。
あいつは平気な顔をして俺のところに来た。
俺はずっと苦しんで生きてきたっていうのに…
あいつは…平気で俺のところに会いにきた。
俺はわかった。
あいつは俺らのことなにも考えてくれない嫌な奴だ。
最低な親だ。
俺も妹も家族の愛なんて知らない。
ずっと孤独だった。
だからなにもわからない。
だったら……
もう俺は親なんていないと思うしかない。
俺の家族は
あなただけだから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。