第53話

[雲隠] 無一郎、また君に出会う
1,552
2020/06/12 03:23
そして…

時が流れ…



静かに年を重ねた、
無一郎とあなたの最期の時が来た。

ずっと寄り添ってきた2人だ。

無一郎は床に伏せっている。
(なまえ)姫
あなた姫
無一郎、しっかりして…
わたしを置いて逝かれるのはいやよ…
無一郎(紫の上)
無一郎(紫の上)
あなた…
悲しまないで…

何度…生まれ変わっても、
僕は必ず君と出会うから
無一郎はゆっくり目を閉じる。
二条では、僧が祈祷している。
(なまえ)姫
あなた姫
無一郎…
どうしたの… 苦しいの?
あなたの呼びかけに、そっと目を開ける。
藤の花が舞い、二条に光が差し込む。
無一郎(紫の上)
無一郎(紫の上)
愛するあなた…

君こそが僕の人生…
僕のすべてだったよ…
再び、目を閉じようとする。
(なまえ)姫
あなた姫
待って…
せめて今ひとめ…
無一郎(紫の上)
無一郎(紫の上)
あなた…

僕は、いつの時代も、
君の一番近くにいる魂となり…

必ず君を守り、君を愛する…
(なまえ)姫
あなた姫
無一郎…いやよっ…
最期の時となり、
「あの人」の姿と無一郎が重なる。
あの人
あの人
次の世でもきっと君を見つけるから…

きっと君に出会うよ…

いつも君に…
(なまえ)姫
あなた姫
あの人…

わたしは
いつの世も追い求めていた

わたしのそばにいる魂…
無一郎(紫の上)
無一郎(紫の上)
君もきっと僕のそばへ来て…

僕を探して…
そして僕に出会って…!
(なまえ)姫
あなた姫
無一郎っっ!!

きっと出会うからっ…

あなたに…
きっと…!!
無一郎は安心したようにほほえんだ。
あなたは無一郎に泣きすがる。
無一郎(紫の上)
無一郎(紫の上)
どうか泣かないで…

僕のかわいい姫…
藤の花が散ってゆく…。
(なまえ)姫
あなた姫
うん…

無一郎…いつもそばに…

無一郎…
まぶしいほどの温かな光が、
無一郎を包む。
無一郎(紫の上)
無一郎(紫の上)
花を…つみに行こうね…

ぼくが抱っこするから…

あなたが取ってね…
無一郎は…静かに…

目を閉じた…………。
(なまえ)姫
あなた姫
無一郎…………


見て…

見たことないような
美しい紫色の雲だよ…



色は匂へど 散りぬるを

わが世 誰ぞ 常ならむ

うゐの奥山 今日越えて

あさき 夢みし…






人の世は輪廻転生…

悲しみの闇を抜ける…







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