第16話

16話
1,023
2021/01/15 10:24
あなた
あなた
ん…ここは…
目が覚めるとそこには
見知らぬ天井が広がっていた
伊黒小芭内
伊黒小芭内
起きたか
あなた
あなた
蛇柱!
あなた
あなた
っ!
咄嗟に動こうとしたが
全身が痛くてそれどころではなかった。
それに、よく見てみると
私が寝ているのは布団の上だった
伊黒小芭内
伊黒小芭内
無理をするな、
お前は誰よりも怪我をしていたんだからな
あなた
あなた
だから…そんなことないって…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
それにお前は、よく人のことを
見ていると思う
宇髄の視力が落ちただなんて
普通ではわかるまい…
あなた
あなた
……
伊黒小芭内
伊黒小芭内
お前、何も食ってないだろ
女性にこんなことを言うのはあれだが
お前は軽すぎる。
あなた
あなた
別に…普通だ…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
突然食べると体が持たないから
とりあえずはお粥を作ってみた。
これなら食いやすいだろ
小さい鍋と、れんげに、桃を切り分けたものに
水が乗ったお盆を私の横に置いてきた。
ほのかに塩っけのある匂いがし、
味付けをしてくれたんだと蓋をされているが
わかる。
あなた
あなた
…ありがとう
私はお腹が空いていたため
素直にお礼を言い、蓋を開ける
あなた
あなた
とろろ昆布…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
なんだ、嫌いなのか
あなた
あなた
いや…とろろ昆布好きだから…
それに…桃も…
そう、私は桃の他に
とろろ昆布も好きなんだ
あなた
あなた
いただきます…
時間はかかったけれど
完食することが出来た
あなた
あなた
ごちそうさまでした…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
嗚呼、そこに置いておけ
ところでお前に聞きたいことがある
あなた
あなた
なんですか…
ここまで運んでもらい、
治療までしてもらって、ご飯も食べさせてもらった
それなのに、答えないのはおかしいと
私でもわかる。だから、質問に答えることにした
伊黒小芭内
伊黒小芭内
お前を運んでいる時
ごめんなさい
許して、
などと言っていたが…どういう意味だ
あなた
あなた
それは…
私は諦めて話すことにした。
獪岳に話したように
そのまま、伝えた。
親に殴られていたことも
死にたい理由もすべて
伊黒小芭内
伊黒小芭内
そうか…お前も…
あなた
あなた
お前も…それはどういうことだ…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
少し待て
そういうと蛇柱は
口元の包帯を外し出した
あなた
あなた
なっ、お前何して…
包帯を全て外した蛇柱の顔は
耳元まで裂けた口があった
伊黒小芭内
伊黒小芭内
俺はある一族の元に生まれた
俺の生まれた一族では、女ばかりが生まれ
男が生まれることが滅多になかった
そんな中370年ぶりに男が生まれた。
それが俺だ
あなた
あなた
私は黙って話を聞いた
伊黒小芭内
伊黒小芭内
一族は金品を強奪して生計を立てていた
俺は12になるまで軟禁生活を送っていた
俺は初めて座敷牢から出て
何やら豪華な部屋に連れていかれた
そこに居たのは
あなた
あなた
蛇鬼…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
そうだ、
俺は目の色が珍しいということもあり
その蛇鬼に気に入られた。
まだ食うには惜しいからと
その鬼と口をお揃いにするために…
口を裂かれた…
その時座敷牢に迷い込んできたのが
鏑丸なんだ
あなた
あなた
蛇鬼から逃亡して
その時に助けてくれたのが
元炎柱の慎寿郎さん…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
生き残ったいとこと再会し言われた
お前のせいで50人死んだ…
生贄のくせに…
大人しく喰われてりゃ良かったのにってな
あなた
あなた
そうなのか…
獪岳の時も、どこか似ていると
感じていた。
だけど蛇柱の話を聞いて思った
私はこいつと1番似ているのかもしれない…と
あなた
あなた
あなた…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
は?
あなた
あなた
如月きさらぎあなた…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
俺は伊黒小芭内だ
あなた
あなた
ねぇ、小芭内
今日私が話したことは
ほかの柱には伝えないで欲しい
私の過去を知っているのは
元柱の人3人と鳴柱の弟子の獪岳だけだから
あなた
あなた
みんなあたしの秘密を知りたがってる
そんなことは知ってる
だけど…これは伝えられない。
お願い。黙ってて…ください
伊黒小芭内
伊黒小芭内
…わかった黙っていよう
あなた
あなた
その代わり…情報の提供はする
小芭内となら話す
治り次第ここも出ていく
だから、それまでかくまって欲しい
伊黒小芭内
伊黒小芭内
…わかった
出て行かなくてもいい
家がないならここに住めばいいだろう
あなた
あなた
え…でも…
お前恋柱と…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
甘露寺か…甘露寺のことはいい
あなた
あなた
そうか…わかった
ならお言葉に甘えさせてもらう…
安心したのか
一気に体の力が抜けて
そのまま眠りについた。
ひなた
ひなた
あなたどうしちゃったんだろ…
今まで、人に甘えることなんてなかったのに
獪岳にすら、いつもどこかしら
警戒をしていた…
なのに何故…あなたの前ではこうして
眠っているんだろう…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
さぁな、俺もここに住んでいいなどと
他の隊士を甘やかしたのははじめてだ
他の隊士に手料理を振舞ったのもな
ひなた
ひなた
ふーん…変な2人…
伊黒小芭内
伊黒小芭内
もう寝ているんだ。静かにしろ
起きたらどうするんだ。
そいつは疲れ切っているんだ
ひなた
ひなた
はぁい
コンコン
宇髄天元
宇髄天元
伊黒ー!
伊黒小芭内
伊黒小芭内
ちっ…こんな時になんだ…
俺は部屋の戸をしめ、
玄関にいる宇髄の元へ向かった。

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