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第4話

夢の中でも
草飼 望
草飼 望
りつに教えてもらったバンドの新曲よかったよ
桜庭 律
あー、バラードのやつ? のぞむってそういう系ばっか好きになるよな
鈴城 夕凪
子守歌になるからでしょ
草飼 望
草飼 望
まあ、家では寝るとき音楽聞くからね


 お昼休みはこうして4人でご飯を食べるようになった。

 2つの机を合わせて私とのぞむが並んで座り、その正面に鈴城すずしろさんと桜庭さくらばくんが座っている。


 けど、主にしゃべるのは3人だけ。

 私はまだ慣れていなくて黙々とお弁当を食べ、話している様子を伺っている状態。

鈴城 夕凪
透花とうかちゃんは? 好きなアーティストとかいるの?


 ペットボトルの水を飲んでいたら、目が合った鈴城さんにそんなことをたずねられた。

茨野 透花
茨野 透花
私は……
茨野 透花
茨野 透花
(この前好きだと思ったCMの曲って、なんてグループのだったかしら?)


 考えながらふたを閉めようとすると――。




     コツッ



茨野 透花
茨野 透花
(あれ? 蓋がはまらない)


 手元を見てみれば、蓋を逆さにもって飲み口に押し当てていた。

 その瞬間、ぶわっと毛が逆立つような勢いで恥ずかしさがき上がり、私は思わず俯いてしまう。

草飼 望
草飼 望
あ、それ期間限定のチェリーウォーターだ。美味しかった?
茨野 透花
茨野 透花
え? ……美味しいわよ。甘酸あまずっぱくてさわやかな感じ
草飼 望
草飼 望
俺も飲みたいなー、1口いい?


 1口と言えどくちびるが触れれば間接キスになってしまう。

 彼はそんなことを気にしないたちなのかもしれないけど、私は絶対に恥ずかしくなる。


 けど、そんな理由で断ってしまうのは悪い気もする。


 どうすればいいか、私は一時停止してしまったように固まり、ぐるぐると考えをめぐらせた。

桜庭 律
茨野いばらのさん困ってるから、ねだるのはやめなさい
茨野 透花
茨野 透花
(あ、気を遣わせてしまってる!)


 私は持っていた蓋を机に置き、意を決して望にペットボトルを差しだす。

茨野 透花
茨野 透花
大丈夫よ。どうぞ
草飼 望
草飼 望
やったー、ありがとう


 彼は受け取ったペットボトルを口元まで持っていく。

 なぜか私はその動作を見逃すことなく目で追っていた。


 程よくうるおっているくちびるが飲み口に触れ、のどぼとけが上下する。




     ドキッ




 意識しすぎているせいか、その光景はとても色っぽく見える。

 私は心の中で自分のほおを叩き、恥ずかしさでおかしくなってしまわないよう保つのに必死だった。

草飼 望
草飼 望
んー、美味しい! 俺も明日買おー


 そう言って彼は自然な動作でペットボトルの蓋を閉めて返してくれる。

茨野 透花
茨野 透花
(あれ? さっきのタイミングでねだったり、蓋を閉めてくれたり……。もしかして、私がドジったことに気付いてる?)
草飼 望
草飼 望
律、食べ終わったー? ゴミ一緒に捨ててくるよー
桜庭 律
ん、サンキュー
茨野 透花
茨野 透花
(望って人のことよく見てるし、……ありえる)


 ゴミ捨てから戻ってきた望は、2人の背中に手を置く。

草飼 望
草飼 望
さて、じゃあ俺と透花は2人で寝るので、律と夕凪ゆうなは席を外してね
茨野 透花
茨野 透花
(んー? 早く人払いがしたかっただけ? 望って掴めないわね)


 2人が去っていくと、彼は机を合わせたまま私の方を向いて寝る体勢に入ってしまう。

茨野 透花
茨野 透花
机は離した方が良いんじゃない? 近くて窮屈きゅうくつかもしれないし……
草飼 望
草飼 望
透花の可愛い寝顔を近くで見たいから、これでいいのー


 彼の声はすでにふにゃふにゃしていて、もう眠気に襲われているのがわかった。

 仕方なく机を合わせたままにしたけど、少しの抵抗として、私は机の端ぎりぎりで腕枕を作り彼の寝顔を眺める。


 周りがざわめいているけど、そんなことを気にする暇もないほど早く、私は夢の中へと落ちていく。









 ふわふわの何かに包まれて浮いているような心地よさに、私はまぶたを開ける。

 教室の机で眠っていたはずが、私はいつの間にか一面真っ白の雲の上で寝転んでいた。

 寝返って上を見上げれば、普段よりも近い星空と大きな月が視界いっぱいに広がる。

茨野 透花
茨野 透花
これ、夢よね
茨野 透花
茨野 透花
こんな綺麗きれいな場所見たことも行ったこともないのに、脳みそってすごいのね


 真面目に感心していると、隣から彼の寝息が聞こえてくる。

 そちらに寝返れば鼻の先に彼の顔があり、私は息をのんだ。


 幸せそうな彼の寝顔は夢の中なのに綺麗に再現されていて、思わず見惚れてしまう。

茨野 透花
茨野 透花
私も望と一緒ね。こんなに近くで幸せそうな寝顔を眺められるって、なかなかいいかも


 心和んだ私はまた瞳を閉じた。









     カシャッ!


 大きなシャッター音が聞こえて目を覚ますと、スマートフォンのカメラがこれでもかというほど近づけられていた。

男子生徒1
あ! ごめん!
茨野 透花
茨野 透花
え? えぇ


 寝起きで理解が追いつかないまま顔を上げると、私と彼は大勢の同級生たちに囲まれていた。

 みんなスマートフォンを片手に、こちらを笑顔で見ている。

鈴城 夕凪
ごめん、透花ちゃん! 止められなくって
茨野 透花
茨野 透花
これは……
桜庭 律
まぁ、2人の寝顔撮影会?
鈴城 夕凪
1人の子が可愛い―って言って撮り始めたら、続々と集まって……こんな感じ!
茨野 透花
茨野 透花
そう、なのね
桜庭 律
他人のスマホに自分の写真があるとか嫌だよな?
はーい、みんな消せよー
茨野 透花
茨野 透花
ネットに乗せたりしないならいいけど、ほどほどにね
男子生徒2
よっしゃー! ありがとう、茨野さん!
草飼 望
草飼 望
ふわぁ~、どうしたのー?
茨野 透花
茨野 透花
おはよう、望
草飼 望
草飼 望
あぁー、……透花。なんか、ふわふわな場所で一緒に寝てた……はずなのに
茨野 透花
茨野 透花
(ふわふわの場所? 私と似てる夢を見てたのね。なんだか嬉しいかも)


 彼はまだ眠たげな目をこすり、私に幸せそうな笑みを見せてくれる。

草飼 望
草飼 望
気持ちよく眠れた?
茨野 透花
茨野 透花
えぇ、望は?
草飼 望
草飼 望
俺も。また明日も一緒に寝たいなー
茨野 透花
茨野 透花
1回って言ったじゃない
草飼 望
草飼 望
えー、けど、どうせ寝るでしょ?
茨野 透花
茨野 透花
まぁね
草飼 望
草飼 望
ははっ、じゃあ明日も一緒に寝ようね、約束


 そんな私と望の会話に女の子たちの黄色い悲鳴が上がり、シャッター音が鳴り響く。


 その音で、私は小さな不安の種を聞き逃していた。




???
ちっ、無表情女のくせに