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第10話

助けてと言う勇気


 「無表情女」そう言ったあの女の子は、あの日から私へのいじめを続けていた。

茨野 透花
茨野 透花
あっ!
草飼 望
草飼 望
うわっ、透花とうか大丈夫?
何もないところでつまづくなんて、気を付けてね?
茨野 透花
茨野 透花
えぇ、受け止めてくれてありがとう、望
いばら姫アンチ
……ちっ

 みんなが見ていないすれ違いざまに足を引っかけられたり。



草飼 望
草飼 望
透花、最近よく教科書忘れるね?
茨野 透花
茨野 透花
一度家に持って帰ると、忘れちゃうわよね

 ロッカーに入れていた教科書まで泥水まみれにされたり。



 それに引きずられるようにドジを連発することもあった。
茨野 透花
茨野 透花
望、あとでノートを――
桜庭 律
望なら向こうで夕凪ゆうなといるけど……
茨野 透花
茨野 透花
あ、ごめんなさい。桜庭さくらばくんにノートを見せてもらいたかったのよ!

 名前を呼びまちがえたり。




鈴城 夕凪
透花ちゃん、今日なんかお弁当大きくない?
茨野 透花
茨野 透花
……これ、お父さんのお弁当ね

 お父さんのお弁当を間違えて持ってきてしまったり。



 そんなことが続き、私は望に出会う前のように、眠ることで現実から逃げていた。



女子生徒1
ねぇ、最近いばら姫おかしくない?
女子生徒2
あーね、なんかかっこ悪い?
変に笑うようになったし
女子生徒1
私前の方が好きだったなぁ
草飼 望
草飼 望
……
鈴城 夕凪
ねぇ、望なにか知らないの?
桜庭 律
最近寝てばっかで、俺たちといることも少なくなったよな



 遠くからみんなの声が聞こえてくる。

 心配されているのはわかるけど、疲れている私は起き上がることができなかった。

 私なりの笑顔をしているけど、それもみんなにわかってしまうほど変らしい。


 最近は望との夢も見なくなり、悪夢ばかり。

 正直、寝ても起きても辛かった。

茨野 透花
茨野 透花
(こんな状態で望と一緒に寝るなんて、申し訳ないわ。辛い気持ちが移っちゃうかもしれない)


 彼とのお昼寝も避けて、私はフラフラと校内を彷徨う。

 前に教えてもらった人通りの少ない階段の踊り場、あそこで少し眠ってみよう、そう思い私は足早に向かった。


 けど、その階段を上っていると、頭上から甘い香りの水が降ってきて全身にかかる。

 べとべとするそれはジュースのようで、上を見上げればあの女の子がいた。

いばら姫アンチ
あはははは! 最高!
……あんた邪魔だから、さっさと望から離れてよ、ブス


 そんなことをされても私の顔は強張ったまま、眉が下がることも、眉間にしわが寄ることもない。

 けど、涙は瞳から零れそうなほど溢れてくる。

茨野 透花
茨野 透花
(あの子は望のそばにいる私が気に入らなかったのね……)
茨野 透花
茨野 透花
(けど、そんなことよりも、……なんで私はこんなにも変われないんだろう?)
茨野 透花
茨野 透花
(努力が足りない?
気持ちが足りない?
やろうとしてることが間違ってる?)
茨野 透花
茨野 透花
(なにも……わからない)


 私はその場から、抜け出せない悩みから、逃げだすように走り出した。



 走って走って、夢中で足を動かし続け、たどり着いたのは望と見つけたあの部屋だった。

 すがる思いでドアを開けると、そこには望が1人でソファに座っていた。


 まさかいると思っていなくて、情けない姿を見られてしまった私は背を向けてその場を去ろうとする。


 けど、優しい温もりが私の手を握り、離してくれなかった。

草飼 望
草飼 望
透花、待って!
その恰好……、とりあえず、保健室に行こう


 望に連れられて保健室につき、私は保健医の先生に渡された体操着に着替えていた。

 パーテーションの向こうには望がいて、私に声をかけてくれる。

草飼 望
草飼 望
保健医の先生、担任と話してくるって。
……ねぇ、透花。そろそろ、俺を頼ってよ。いじめられてるんでしょ?
茨野 透花
茨野 透花
……
草飼 望
草飼 望
透花は真面目だから、1人で解決しようと思ってるのかもしれないけど、もうこれ以上辛そうなのは見てられないよ
茨野 透花
茨野 透花
……今まで、私は望に甘えてたわ
草飼 望
草飼 望
どこが? 俺はそんな覚えないよ
茨野 透花
茨野 透花
望がいてくれるだけで、私は楽をしてきたの。変わろうと思ってたのに、それを忘れてサボっていた。だから、きっとこれはその罰なのよ。自業自得なの。


 着替え終わってパーテーションから出ていくと、彼から真剣な真差しを向けられる。そんなに心配しないで、という気持ちで私は精一杯微笑みかけた。

 けど、彼の表情は悲しそうにゆがみ、私を壊れもののように優しく抱きしめてくれる。

草飼 望
草飼 望
悲しい時は笑わなくていいんだよ
草飼 望
草飼 望
こっちきて


 彼はベッドに座り、膝をぽんぽんと叩いた。

草飼 望
草飼 望
先生が帰って来るまで眠ってていいよ


 私はその優しさに涙がこぼれてしまう。

 甘えてはいけない、そうわかっているのに、体は勝手に彼の膝を枕に寝転んでしまう。


 鼓動がうるさい。けど、それさえも今は心地が良かった。

草飼 望
草飼 望
ねぇ、透花。俺は素直に助けを求めるのも勇気がいると思うよ。真面目で頑張り屋な透花には、そういう自分の変え方もあるんじゃない?
茨野 透花
茨野 透花
……なにもうまくいかなくて、辛かったわ
草飼 望
草飼 望
うん
茨野 透花
茨野 透花
なにが悪いかもどう変えるべきかも、わかってるつもりだったの。けど、笑顔さえ私にはうまくいかなかった
草飼 望
草飼 望
さっきも言ったけど、無理して笑うものじゃないよ。
それに透花は気づいていないかもしれないけど、出会った頃よりも可愛い笑顔を見せてくれるようになってる。だから、安心して
茨野 透花
茨野 透花
うん。
……望、いじめってどうすれば終わるかしら?
力を貸してほしいわ
草飼 望
草飼 望
もちろん。よく言えたね、いい子


 彼は優しく落ち着かせてくれるように頭を撫でてくれた。

 久しぶりのぬくもりに、私はされるがまま深い眠りに落ちていく。