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第1話

本当のいばら姫は……
茨野 透花
茨野 透花
(2-1は……、2階の東階段前ね)


 今日は2年生になって初めての登校日。

 クラス分けのプリントを持っている手はほんのりと汗がにじんでいる。


 階段を上った目の前の教室はすでにドアが開いていて、私は少し立ち止まってゆっくりと深呼吸をする。

茨野 透花
茨野 透花
(今年は明るく笑顔よ)


 教室から女の子たちの笑い声が聞こえ、勇気を振りしぼって中へ入る。


 そこには10人ほどの生徒がいて、いくつかのグループに分かれて談笑だんしょうしていた。

 笑い声を上げていた女の子と目が合うと、その子は小さく声をらす。

女子生徒1
あ、いばら姫だ
女子生徒2
え、いばら姫? なんの話?
女子生徒1
知らない? 今教室に入ってきた綺麗きれいな子


 私は向けられた視線を避け、席順の書かれた黒板を見に行く。

女子生徒1
クールビューティーないばら姫。
いつもりんとしてて冷静で、かっこいい綺麗なお姉さんって感じ?
茨野 透花
茨野 透花
(……緊張きんちょうで言葉も表情も固くなってるだけよ!)
女子生徒2
へぇー、初めて聞いた。まぁ、確かに美人だよね
女子生徒1
あー、あといばら姫って茨野いばらのっていう名字からきてるらしいんだけど、その名前の通りよく眠ってるらしいよ。寝顔とかガチで綺麗で、いばらをまとってるみたいで近寄れないんだって!
茨野 透花
茨野 透花
(はぁー、もうずかしくて振り向けない。
けど、今年こそは仲のいい友達を作りたいし……)
茨野 透花
茨野 透花
(とりあえず、席にかばんを置いて……)


 今までボーっと見ていた黒板をしっかり確認してみると、五十音順なのは間違いないのに、私の名前は1列目にも2列目にもなかった。

茨野 透花
茨野 透花
(あれ? 私の名前……ない)
委員長
あのー、……茨野さん
茨野 透花
茨野 透花
……委員長、今年も同じクラスなのね。よろしく
茨野 透花
茨野 透花
(去年は全然話せなかったけど、今年は仲良くなれるかしら?)
委員長
あ、私も同じだったらうれしかったんだけど!
……えっと、茨野さん、たぶん1組だよね?



 彼女はクラス分けのプリントを見ながら私にそうたずねた。

茨野 透花
茨野 透花
そう、ね




 とてもいやな予感がする。



委員長
それなら教室が違うかも。ここ8組だから


 開いているドアから廊下を見ると目の前には階段がある。

 けど、少し視線を上げれば、教室札には「2-8」と大きな文字で書かれていた。

茨野 透花
茨野 透花
(またやったぁー!! なんでこう……私ってドジるの?)
茨野 透花
茨野 透花
そうみたいね。教えてくれてありがとう
委員長
そんなっ! あ、1組はこの階の向こうのはしだから!
またね、茨野さん


 私は恥ずかしすぎて顔が強張こわばり、口調が少し速くなってしまった。

 もう早くかくれたい、そんな思いで足早に8組を出ていくと、また女の子たちの声が聞こえてくる。

女子生徒1
ほら! 失敗しても動揺どうようしない冷静さ! マジでクールビューティー!
女子生徒2
私だったらちょっと恥ずかしくて笑うわ
茨野 透花
茨野 透花
(恥ずかしすぎて反応できないだけよ!)


 朝から緊張きんちょうし続けた挙句あげくこんな失敗をして、すっかり出端でばなくじかれてしまった。

 精神的に疲れがまってしまう。

茨野 透花
茨野 透花
(はぁ~、どうしよう。もう眠くなってきちゃった)


 廊下の端にたどり着き、私は教室札が「2-1」であることをしっかりと確認して中に入る。

 すぐに黒板を見に行こうとしたけど、それよりも目を引く男の子がいた。

 廊下側から1列目、前から3番目の席に座っている彼は、うでまくらにして気持ちよさそうに眠っている。

草飼 望
草飼 望
……


 ふわふわのかみの毛や雰囲気ふんいきがとてもやわらかく、まるで羊のよう。

茨野 透花
茨野 透花
(あんな感じだったら、私も話しやすそうって思ってもらえたかしら?)


 その子を横目に見ながら黒板を確認すると、私の席は眠っている彼がいるところだった。

茨野 透花
茨野 透花
(この子、席まちがえてるの?)


 顔をのぞきこんでみれば、幸せそうに微笑んでいる寝顔に思わず見惚みほれてしまう。


 よく見てみると彼の腕の下には「バイト許可願きょかねがい」の用紙がかれていた。

 その名前のらんに「草飼望くさかい のぞむ」と書かれている。

茨野 透花
茨野 透花
草飼望くさかい のぞむくんか。席は……、私の左隣ね)
茨野 透花
茨野 透花
(んー、けど、気持ちよく眠っている時って起こされるの嫌よね)


 彼の席に座りぼーっと寝顔を眺めていると、1つあくびがれてしまう。

茨野 透花
茨野 透花
(……少しだけ)


 そのままいざなわれるように私のまぶたはゆっくりと閉じた。

女子生徒3
ちょっ、あれ見て! いばら姫と羊くんが一緒に寝てる!
女子生徒4
あ、ホントだ! てか、2人とも1組なの!? やばぁ
茨野 透花
茨野 透花
(……羊、くん?)


 なんだか気になるけど、ふんわりとした良い寝心地にあらがえず、私は眠りに落ちていった。