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第6話

気付いてたよ


 お昼休みは一緒に寝るのが普通になった私と望。

 「羊と眠るいばら姫」なんて言ううわさが他クラス、他学年でも話題になり、2年1組には日を増すごとに人が集まってきた。

鈴城 夕凪
人目を引くのは前からだったけど、最近は2人セットで人気急上昇だねー
桜庭 律
俺が見られてるわけじゃないのに、飯食べにくいんだよなぁ
草飼 望
草飼 望
ははっ……。あ、俺パン食べる前にトイレ行ってくるね
茨野 透花
茨野 透花
いってらっしゃい


 望が教室を出ていくと、すぐに私のスマートフォンに彼からのメッセージが届いた。

 開いてみれば「屋上に避難ひなん! 透花も来てー」と書かれている。

 私は2人に説明して、望のパンを持って屋上へ向かう。



 屋上につくとおだやかな風が吹き抜け、青空の下で望は気持ちよさそうに寝転んでいた。

茨野 透花
茨野 透花
お待たせ
草飼 望
草飼 望
透花、メッセージ気づいてくれてよかったー
茨野 透花
茨野 透花
すぐだったからね。はい、これ望のパン
草飼 望
草飼 望
わ、ありがとうー!
けど、透花のお弁当は?


 そうたずねられて、私はやっと自分のお弁当を教室に忘れたことに気が付いた。

茨野 透花
茨野 透花
そうね。ここで寝たいし、取りに戻るわ


 望に背を向けて屋上を出ていこうとすると、手首を掴まれて止められてしまう。
草飼 望
草飼 望
だーめ、そんなに出入りしてたら気付かれちゃうよ。
ふふっ、けど、俺のは持ってきてくれて自分のを忘れちゃうなんて、透花ってドジっ子だよね
茨野 透花
茨野 透花
え!? そうよ!
私ってドジなの!
草飼 望
草飼 望
え? ふふっ、うん、気づいてたよ?
茨野 透花
茨野 透花
やっぱり気づいてたのね!
望が初めてよ、気づいてくれたの
草飼 望
草飼 望
なんでそんなに嬉しそうなの?
透花って結構恥ずかしがり屋さんだよね?
茨野 透花
茨野 透花
そんなことまで気づいてたの!?
確かに、人からドジって直接言われるのは思ったより恥ずかしいわね。
けど、今まで冷静とかクールビューティーだなんて誤解ばっかりだったから、気づいてもらえたことがなんだか嬉しいの!
草飼 望
草飼 望
あははっ、そうなんだ。
よく見てたらわかりそうだけどね。そういうところ可愛いと思うし
茨野 透花
茨野 透花
その可愛いっていうのやめてくれない?
本当に恥ずかしいのよ
草飼 望
草飼 望
それも知ってて言ってるって言ったら?
茨野 透花
茨野 透花
っ!? 望って意地悪いじわるだったのね!
草飼 望
草飼 望
あははっ、ごめん。怒らないで?
ほら、パン半分あげるから


 彼は2つあるサンドイッチのうちの1つを私の前に差し出してくれた。

茨野 透花
茨野 透花
それは悪いわ。私が忘れたのがいけないんだから、それは望が食べて
草飼 望
草飼 望
屋上に来てもらったのは俺のわがままだし、今まで意地悪もしてたのに、いいの?
茨野 透花
茨野 透花
私もゆっくり眠りたかったから、屋上の件はいいのよ。
けど、意地悪は許さないわ
草飼 望
草飼 望
ははっ、やっと俺に心を開いてくれた? 前よりも可愛いんだけど
茨野 透花
茨野 透花
だから! そういうのが恥ずかしいって言ってるの!
まぁ、気づいているなら思ってることも素直に言えるってだけよ
草飼 望
草飼 望
そっかぁ、もっと早く言えばよかったなぁ。
とりあえず、これは食べてね
茨野 透花
茨野 透花
え、けど……


 私が受け取らずにいると、望は良いことでも思いついたように表情が明るくなる。

草飼 望
草飼 望
じゃあ、パンをあげる代わりに、明日も2人だけで寝るっていうのはどう?
ただ眠ってるだけでも、透花がそばにいてくれると幸せって感じがするんだよね
茨野 透花
茨野 透花
そこまで言うなら食べさせてもらうけど、私だって同じよ?


 壁を背にして並んで座り、私と望はパンを食べ始める。

茨野 透花
茨野 透花
私って、……まぁこんなでしょ。眠るのはただ嫌な現実から逃げるだけの手段だったのよ。
けど、望と眠るのはなんだか幸せで、一緒に寝るのが目的になったの
茨野 透花
茨野 透花
うーん、……言いたいことわかる?
草飼 望
草飼 望
大丈夫、わかるよ。
……確かに、俺も手段と目的って……入れ替わってるかもなぁ


 望は話していた私よりも先に食べ終わり、頭と頭をこつんと合わせてくる。

茨野 透花
茨野 透花
(なんで望のそばにいるのは、こんなに心地いいんだろう?)
草飼 望
草飼 望
食べ終わった?
茨野 透花
茨野 透花
えぇ
草飼 望
草飼 望
じゃあ、寝よっか


 安心できるこの空間を守りたい。

 この時間が無くならないように、待っていないで私も何かしよう。

草飼 望
草飼 望
……透花も俺の夢見てね


 意識が遠のいていく中、彼の声が耳元で聞こえた気がする。
















 目を開ければ、私はいつもの雲の上に立っていた。

茨野 透花
茨野 透花
この夢も見慣れてきたわね


 けど、いつもとは違って望はどこにもいない。

 それはまるで彼と出会う前の1人きりの世界で、私は急にむなしくなってしまう。


 せっかく彼と思いが通じたような気がしたのに、全部なかったことのように感じる。


 足元の雲は薄くなり、私は不安定な足場を失って下へと落ちていく。




 けど、落ちる私の手を誰かが掴んだ。



草飼 望
草飼 望
よかった、間に合って
茨野 透花
茨野 透花
……望


 引き上げてくれた彼は私をぎゅっと抱きしめ、優しく微笑みかけてくれる。


 その瞬間、星が一段と輝き、私たちの周囲を舞うように駆けていく。


 私の頬を涙が一筋流れ落ち、彼に手を伸ばそうとした時――。









 夢から覚めてまぶたを開けると、鈴城すずしろさんと桜庭さくらばくんがのんびりとくつろいでいた。

鈴城 夕凪
透花ちゃん、おはよう!
そろそろ時間だから起こしに来たよー
茨野 透花
茨野 透花
おはよう。
2人ともいつもありがとうね
桜庭 律
こっちこそ、望のわがままに付き合ってくれてありがとう
茨野 透花
茨野 透花
私も同意の上だから、感謝されるようなことじゃないわ
茨野 透花
茨野 透花
(望が居なければ、こうして2人と話すこともなかったのよね。
友達がいる今の生活は、全部望がいてくれたから手に入ったもの)
茨野 透花
茨野 透花
(友達が欲しい、そのためには変わらないとって思ってたのに、
望の存在に甘えて努力を忘れてたわ)


 もらってばかりの関係を友達と呼べるのか、ましてや、対等ではない状態で親友や恋人だなんてあり得ない。

茨野 透花
茨野 透花
(望は……ただの睡眠仲間。こんな私には、友達なんてまだ程遠いわ)