夕日で赤く染まる帰り道。
これから始まる話に期待が膨らみ、体に熱がこもっているような気がする。
今までにない感覚に、私は緊張よりも高揚感を強く感じていた。
ドキッ
きっと、同じ気持ち、そう信じたい私はただ彼の言葉を待っていた。
けど、言葉よりも先に触れる熱い指先。
彼は逃げない私の手をとらえて、絡めるように恋人繋ぎをした。
立ち止まって私の顔を覗き込む彼は、なんだかずるい気がした。
いつも私を甘やかして、恥ずかしがらせて、追い込み漁でもされている気分だ。
私もやり返したいと方法を考えていると、望の耳がほんのり赤みを帯びているように見えた。
私は彼の肩に手をついて、耳に息を吹きかける。
予想は的中し、彼は顔まで赤く染めてしまう。
彼は私に向き合って両手を包み込むと、額にキスを落とす。
恥ずかしいことをサラッとしてしまう望が少し憎たらしい。
けど、彼のそんなところも好きなのだから、私は重症だ。
日も沈みはじめ、望はバイトに行く時間が迫っていた。
気持ちが通じ合ったのに、なんだか名残惜しいけど、私は彼の頬を撫でることで我慢した。
次の日の朝、恋人同士になったことを周りに知らしめたいのか、椅子に座っている望は私を膝に乗せて離さない。
彼と眠る日々がこれからも続けばいい。
「おやすみ」と「おはよう」を繰り返して、いつまでも。
☆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。