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第11話

好きな子のためなら


 のぞむと相談して、なにもされないように早朝に学校へ来たけど、今日もいじめは行われていた。

茨野 透花
茨野 透花
(上履きに画びょうなんて……、
昨日仕込んだのかしら?)


 昨日、望に甘えた分、私は少し心に余裕ができていた。

 そうはいっても辛くないわけではない。



 昨日の件で担任の先生にも事情を聞かれてしまい、私は自分で解決することを前提に少しだけ説明した。


 望の力を借りてしまうけど、自分で気持ちを整理して解決したい。そうでないと、変われない気がする。

 私が気合を入れて意気込んでいると、前から来た人に気付かずぶつかってしまう。

茨野 透花
茨野 透花
あっ、ごめんなさい
草飼 望
草飼 望
わっ、こっちこそごめん!
って、透花とうか!?
……もう来ちゃったんだ


 彼はスマートフォンを見ていたようで、それは床へと転がってしまった。

 そこには、この学校の女子生徒の後姿が映っている様に見える。


 よく見ようとしたら、望はそれをすぐに拾い上げてしまう。

草飼 望
草飼 望
あー、えっと、大丈夫……じゃないよね。
上履きに画びょう入ってたでしょ?
茨野 透花
茨野 透花
え、なんで知っているの?
草飼 望
草飼 望
現場をおさえて写真を撮ったんだ。
ごめんね、今戻って取り除こうと思ってたんだけど
茨野 透花
茨野 透花
いいのよ。それより、すごいわね
草飼 望
草飼 望
それから、その子たぶん俺のファンの子だと思う
茨野 透花
茨野 透花
えぇ、そうね。離れろって言われたわ
草飼 望
草飼 望
じゃあ、今回のって透花じゃなくて俺のせいじゃん。
本当にごめん


 望は私に深く頭を下げた。けど、それはお門違いだ。

茨野 透花
茨野 透花
望が謝ることじゃないわ。
私の問題であるのは間違いないし、いけないことをしてるのは彼女よ?
だから、謝らないで
草飼 望
草飼 望
……うん。
とりあえず、ちょっと作戦を立ててみたから、今日のお昼は教室にいよう
茨野 透花
茨野 透花
わかったわ






 その後も廊下ですれ違えば細かないじめを受け、私は少し疲れてしまった。


 望は特に作戦の内容も教えてくれず、「眠ってていいよ」と言われてしまう。

 その言葉に甘えて、私は望の隣で久々の癒しを感じながら眠っていた。













     ちゅっ




 くちびるに触れる柔らかな感触で目を覚ますと、鼻もこすれ合ってしまうほどの0距離に望の顔が見える。


茨野 透花
茨野 透花
(……望?
……これ、もしかして今っ――!?)


 頭が覚醒して望とキスをしていると気づいた瞬間、彼の唇は離れていき、私は勢いよく起き上がってしまう。

草飼 望
草飼 望
こうして、いばら姫は王子様のキスで目を覚ましましたー、なーんてっ!


 教室にはたくさんの人が集まっていて、私たちのキスに大盛り上がりだった。

 一部、悲鳴を上げている子たちもいたけど……。

草飼 望
草飼 望
あ、けど、俺は羊かぁ


 そうみんなに語り掛けるように話す望。

 彼の意図がみ取れず、私は鈴城さんと桜庭くんを交互にみた。

 けど、2人もよくわかっていないようで、望の演説のような話は続く。

草飼 望
草飼 望
透花と俺って結構お似合いだよね?
みんなもこんなに見に来てくれるくらい俺たちのこと好きってことでしょ?
いばら姫アンチ
いばら姫となんてお似合いじゃない!
望にはもっとお似合いの子がいるよ!


 そう反論したのは私をいじめている女の子だった。

 彼女は人前であることも気にせず、鬼のような形相で私を睨み付けてくる。

草飼 望
草飼 望
ふーん、例えば君とか?
いばら姫アンチ
そ、そう! 私1年の頃からずっと望のことが――
草飼 望
草飼 望
けど、俺こんなことするような子は嫌いだなぁ


 望は彼女にスマホを突き付けて、画面をスライドさせていく。

 周りにいる生徒たちもその画面を食い入るように見ていた。


 たぶん、あれは望が現場をおさえたと言っていた写真が映っているのだと思う。
草飼 望
草飼 望
ごめんね、みんなの前でこんな写真晒しちゃって


 女の子は唇を噛みしめ、握り締めたこぶしを震わせる。


 そんな彼女に向って、望は今までに聞いたことのない低い声で言葉を放つ。

草飼 望
草飼 望
けど、好きな子をいじめるような奴には容赦しないから
茨野 透花
茨野 透花
(望が怒ってるところ……初めて見た。私のために、そこまで……。
あれ? ……好きな、子って)


 その子は望の顔を見て怯え、走り去ろうとする。


 けど、私はどうしても伝えようと思っていたことがあって、彼女を引き留めてしまう。

茨野 透花
茨野 透花
待って!
私、あなたが思っている通り無表情女なのは確かよ!
それに、ドジで恥ずかしがり屋で……コミュ障なの。
望のそばでぬくぬく温まっている私は見てて腹が立ったと思うわ。
けど、望に見合う人になって、今まで助けてもらった分恩返して、伝えたいことがあるの。
だから、邪魔じゃまって言われても離れたりしないわ!


 彼女は噛みしめていた唇を解いて声を上げる。

いばら姫アンチ
あんたなんて運が良かっただけでしょ!
もうどうだっていい!
好きにすればっ!!


 彼女は走り去っていき、それを追いかけるように友達であろう女の子たちも行ってしまった。

 あんなに望に怖い思いをさせられたのに、追い打ちをかけるようなことをしてしまったかもしれない。


 少しの罪悪感を感じつつ、それでも正直、胸のうちは軽くなった。



 そう思いふけっていると、後ろから勢いよく抱きしめられる。

草飼 望
草飼 望
お疲れ様!
ねぇ、透花ってよく間違いは誰でもするっていうでしょ?
茨野 透花
茨野 透花
そうね。……私が頻繁ひんぱんにするから言ってるだけだけど
草飼 望
草飼 望
けど、それってみんなそうだと思うよ。
間違いだけじゃなくて、弱いところも欠点もみんなある
茨野 透花
茨野 透花
まぁそれはそうね
草飼 望
草飼 望
それを認めて直そうとしてるのって
十分えらいと思わない?
茨野 透花
茨野 透花
……自分のことで、えらいなんて言えないわ
草飼 望
草飼 望
あははっ、けど、わかるでしょ?
茨野 透花
茨野 透花
まぁね


 そう答えれば彼は「いい子、いい子」なんて言って私の頭を柔らかく撫でてくれる。

 けど、なにか思い出したように「あっ」と声を漏らして、私の耳元に唇をよせた。

草飼 望
草飼 望
変わるのはいいけど、可愛いいばら姫は俺の前でだけにしてね?
茨野 透花
茨野 透花
だ、だからっ!! そうやって人前で意地悪なことを言わないで!
草飼 望
草飼 望
小声で言ってるだけマシでしょ?
茨野 透花
茨野 透花
そういう問題じゃないのよ
草飼 望
草飼 望
あ~ぁ~、伝えたいことって何だろう?
茨野 透花
茨野 透花
……それはっ
草飼 望
草飼 望
あははっ、あんまり可愛すぎると羊から狼になっちゃうから、気を付けてね。透花!


 彼はいたずらっ子のような、お得意の無邪気な笑顔を浮かべると、私の頬にキスを落とした。


 あまりの恥ずかしさに、私は顔に熱を感じ頬を赤らめてしまう。




 周りから歓声が沸き起こり、拍手をしている人までいる。

茨野 透花
茨野 透花
みんなで私を恥ずかしがらせないでよっ!