望と相談して、なにもされないように早朝に学校へ来たけど、今日もいじめは行われていた。
昨日、望に甘えた分、私は少し心に余裕ができていた。
そうはいっても辛くないわけではない。
昨日の件で担任の先生にも事情を聞かれてしまい、私は自分で解決することを前提に少しだけ説明した。
望の力を借りてしまうけど、自分で気持ちを整理して解決したい。そうでないと、変われない気がする。
私が気合を入れて意気込んでいると、前から来た人に気付かずぶつかってしまう。
彼はスマートフォンを見ていたようで、それは床へと転がってしまった。
そこには、この学校の女子生徒の後姿が映っている様に見える。
よく見ようとしたら、望はそれをすぐに拾い上げてしまう。
望は私に深く頭を下げた。けど、それはお門違いだ。
その後も廊下ですれ違えば細かないじめを受け、私は少し疲れてしまった。
望は特に作戦の内容も教えてくれず、「眠ってていいよ」と言われてしまう。
その言葉に甘えて、私は望の隣で久々の癒しを感じながら眠っていた。
ちゅっ
唇に触れる柔らかな感触で目を覚ますと、鼻もこすれ合ってしまうほどの0距離に望の顔が見える。
頭が覚醒して望とキスをしていると気づいた瞬間、彼の唇は離れていき、私は勢いよく起き上がってしまう。
教室にはたくさんの人が集まっていて、私たちのキスに大盛り上がりだった。
一部、悲鳴を上げている子たちもいたけど……。
そうみんなに語り掛けるように話す望。
彼の意図が汲み取れず、私は鈴城さんと桜庭くんを交互にみた。
けど、2人もよくわかっていないようで、望の演説のような話は続く。
そう反論したのは私をいじめている女の子だった。
彼女は人前であることも気にせず、鬼のような形相で私を睨み付けてくる。
望は彼女にスマホを突き付けて、画面をスライドさせていく。
周りにいる生徒たちもその画面を食い入るように見ていた。
たぶん、あれは望が現場をおさえたと言っていた写真が映っているのだと思う。
女の子は唇を噛みしめ、握り締めたこぶしを震わせる。
そんな彼女に向って、望は今までに聞いたことのない低い声で言葉を放つ。
その子は望の顔を見て怯え、走り去ろうとする。
けど、私はどうしても伝えようと思っていたことがあって、彼女を引き留めてしまう。
彼女は噛みしめていた唇を解いて声を上げる。
彼女は走り去っていき、それを追いかけるように友達であろう女の子たちも行ってしまった。
あんなに望に怖い思いをさせられたのに、追い打ちをかけるようなことをしてしまったかもしれない。
少しの罪悪感を感じつつ、それでも正直、胸のうちは軽くなった。
そう思いふけっていると、後ろから勢いよく抱きしめられる。
そう答えれば彼は「いい子、いい子」なんて言って私の頭を柔らかく撫でてくれる。
けど、なにか思い出したように「あっ」と声を漏らして、私の耳元に唇をよせた。
彼はいたずらっ子のような、お得意の無邪気な笑顔を浮かべると、私の頬にキスを落とした。
あまりの恥ずかしさに、私は顔に熱を感じ頬を赤らめてしまう。
周りから歓声が沸き起こり、拍手をしている人までいる。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。