逃げなきゃ。逃げなきゃ。
津波が来る....!
俺は莉乃の手を引いて無我夢中で走る。
はぁはぁと莉乃の荒い息遣いが聞こえる。
なんで...昨日まで...さっきまで...こんなこと...!
「ゴゾゾゾゴ....」
!?
「バシャン...ゴポゴポ...!」
目の前が真っ黒になった。
神様は不平等だ。
罪なき人間に死を見せつける。
しかもこんな時に。
楽しみにしてたのに。
なんでかな。
た.....や
たく.........や
拓哉っ!
誰かが呼んでる。
莉乃か...?
いや違う
この声は....。
目を開けると白い壁。
消毒液とゴムのような物が混ざり合う匂い。
ここ知ってる。
病院...?
この人は…。
昨日も今日も会った人。
大学一年生の…
松江 恭平さん…。
莉乃のお兄さん…。
・・・・・・・・・・。
俺は…俺は…
─っ!
やっと思い出した。
あの時…海で…!!!
え…まさか…。
違うよね…。
まさか…〇〇でないよね…?
ねぇねぇ…?
そっか…。
予想していた最悪の結末…ではなかった。
でも、俺が…俺は…俺の…。
え…。
なんで俺だけ…。
グニャリ
視界が歪む。
物が重なって見える。
あぁ…。
-----続く-----
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。