岩手といえばわんこそば。
…ということで俺と莉乃は同じものを頼んだ。
どうやら莉乃はこの店のわんこそば早食い競争で準優勝したらしく、店に入ると店員と友達のような挨拶を交わしていた。
俺がずっと気になっていたこと。
アイツ初対面の人となると急に静かになるからな。
莉乃はテーブルを指でトントンしていた。
適当な回答。
真面目に聞いてるのに。
まぁそこが莉乃らしいけどな。
莉乃は岩手の県立高校に入ったらしい。
一方俺はゲームばっかやってたせいで第二志望の私立高校に行くハメになってしまった。
正直学校は楽しくない。
昔は俺も莉乃も同じような成績だったのに。
いつの間にか莉乃のほうが進んでる。
莉乃の指差す方を見ると、丁度店員さんが大きなお盆におわんを沢山載せてやってくるところだった。
テーブルを埋め尽くすそば。
なんとも不思議な光景。
俺は箸をとるとおわんの蕎麦をすすった。
コシがあって美味しい。
おわんを置く音がして莉乃を見るとアイツは
もう5杯目を食べ終わったところだった。
…早くね?
俺も負けずに蕎麦をすする。
流石準優勝。
俺と莉乃はわんこそばを夢中で食べた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
俺の5倍の速さでわんこそばを食べた莉乃はまだまだ元気だ。
俺は走ったら多分蕎麦が出てくる。
莉乃はチャリで来たらしく、赤色の自転車を持ってきた。
莉乃が自転車のサドルの後ろにある銀色の部分に手を置いた。
え…二人乗り?
危なくね?
莉乃は「真面目だな〜。」と笑うと、俺の手をむりやり引っ張って後ろに乗せた。
莉乃は一気に自転車をこいだ。
夏の暑い風が頬にあたる。
ああ…やっと会えたんだ。
改めて実感する。
残るは三日間。
大切に過ごそう。
-----続く-----
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!