3年生の秋。
だんだん肌寒くなってきた。
ある日の帰り道のこと。
その日は拓哉がプールだから、
桜と二人で通学路を歩いている。
桜は私の親友。
一緒に絵を書いて、人形で遊んで、
この前は魔法伝説ショップにも行った。
時にはケンカするけど、ずっと仲良しだった。
私が意味もなく言った。
最近学校では恋バナが流行っている。
桜は恥ずかしそうにうなずいた。
. .
やっぱり桜にもいるんだ…!
私はズカズカ聞いた。
恋バナは大好き。
きになる…
イケメンなあの子かな…?
優しいあの子かな…?
…………。
桜は黙っている。
え…?
今まで秘密なことなんてなかったのに…
なんで言えないの?誰にも言わないよ。
そう言っても首を縦にふってくれなかった。
お願い!
今度は手を合わせて言った。
…………。
あ、そういう事なのね。
だから言わなかったのね。
でも大丈夫。
私はそんなんで逃げ出したりしないから。
まぁ全部ウソ。
私は走り出した。
そっか、そうだよね。
二人は幼稚園も一緒なんだから
私なんかより仲良しだよね。
…………。
なんだろう。
この気持ち。
悔しい?悲しい?
分からない。
……………………。
もしかして
恋?
-----続く-----
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!