前の話
一覧へ
次の話

第1話

Plorogue
2,244
2021/06/01 10:25
あかね、あの子、わたしが好きな人」

「えっ……、そうなの? 頑張ってね! 応援してる」

できる限り普通に笑ってそう答えた。波奈はなには気づかれていない、と思いたい。

「茜? なんか笑顔がひきつってなぁい? 気のせい?」

友達の一人、優奈ゆうなの一言に、私は内心大慌てだった。ひきつっていて当然だ。

「き、気のせいだよ! 私、波奈のこと大好きだから、本当に応援してるから!」

「ありがとう」

薄い茶色の長い髪に大きな目、きめ細かくて白い肌、枝みたいに細くて雪みたいに白い指……。波奈はかわいい。すごくかわいい。私の何倍も。私にかなう相手ではない。女の私でも、波奈が笑うとはっとするほどだ。

「ねえっ、茜は好きな人いないの?」

優奈がちょっとだけ私をつつく。優奈もやっぱりかわいい、と見るたびに思う。

「あ、私も気になる!」

やっぱりかわいい。初恋の人は、絶対に私なんかより波奈を選ぶだろう。

「いないなぁ……」

「えー、いないの? つまんない……」

「つまんないって……。ほんとにいないんだもん、仕方ないじゃん」

「できたら教えてよ? 応援するから!」

笑いながら波奈は私の肩を叩いた。かわいい顔をしてるけどこういうときだけなぜか力が強いのだ。

「えっ、茜、私にも教えてよ?」

「一番に二人に教えるから安心して?」

「よろしく頼むよ!」

「うん、もちろん」

プリ小説オーディオドラマ