第10話

結城くんと私。
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2021/06/19 12:00
「茜ちゃん」

"茜ちゃん"と彼……、結城颯太くんが私を呼んだのは初めてだった。嬉しかったし、驚いた。

「な、何?」

「今、ちょっといい? 大丈夫、そんな長くならないから」

彼の真剣な表情に押されて、私はうなずいた。いつも笑顔で、明るい彼が珍しい。

「……あのさ。最近1人でいるけど、どうしたの? 僕のことも、避けてるみたいだし」

「っ……」

「僕でよければ聞かせて?」

「ありがと……」

彼の優しさに甘えて、私はぽつりぽつりと話し出した。

波奈とのことを、全て。

いつのまにか、私の目からなにか出ていた。

それが、涙だと気づくのに時間はかからなかった。

「茜ちゃん? どうしたの?」

「ありがと、話聞いてくれて。なんか、だいぶ落ち着いたみたい」

「……それなら良かった。ごめんね、僕のせいでいやな思いさせちゃって」

彼は少し上目遣いになって、謝った。

「別に結城くんが謝ることじゃないのに……」

「あーあ、やっぱダメだなぁ、僕。好きな人に嫌な思いさせちゃうなんて」

「え?」

彼がさりげなくいった言葉を、私は聞き逃さなかった。聞き捨てならない言葉だ。

「あっ……、しまった……」

「……そ、その……」

「茜ちゃん」

彼の声が、真剣味を帯びた。

「はっ、はい……」

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