ふぅっ、と私は大きなため息をついた。
親友の失恋を悲しめない私は、親友失格だ。
最低だ、私は。
大好きな波奈が泣くほどショックを受けているというのに。
自分がこんなに嫌な人間だったなんて、知らなかった。
知りたくなかった。
「……ごめんね。こんな話されても、困っちゃうよね。ごめん」
うつむいて言った波奈は、しばらくしてから顔をあげた。
「さて、そろそろクラスの当番の時間だから、行くね」
「こんなときまでクラスのことなんか気にしなくていいのに」
「ありがと。でも、何かしてたほうが気が紛れるし」
じゃ、行ってくる、と波奈は手を振って走って行った。
でも、私はなかなか立てなかった。
うずくまったまま、唇から嗚咽を洩らし、自己嫌悪と戦っていた。
自分に心底嫌気が差した。
親友のことよりも自分のことを優先してしまう自分が嫌だった。
親友の不幸を喜んでしまう、意地汚い自分の心が嫌だった。
そんな人間にはなりたくないと思っていたのに、そう思わないようにしようとずっと自分に言い聞かせていたのに
本当に心って思い通りにならない。
「あーあ-! やだやだ! なんて人なんだろ、私。ほんと最低……」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!