第30話

ねえ、
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2022/03/07 09:36
「ね、茜ちゃん」

「なに、藤城くん」

はっきり言うと鬱陶しい声を聞いて、私はあえてゆっくり振り返った。

「あのさ、やっぱり僕、茜ちゃんのこと好きです。付き合ってもらえませんか」

「……ありがとう。だけどさ、何回も言ってるよね。私、君の気持ちには応えられないって」

藤城くんの表情は一切変わっていなかった。

「付き合ってる人がいるって、言ってるよね?」

「え、ほんとに?」

彼が初めて表情を変えた。うそでしょ、聞いてなかったの、と思う。私は三回も同じことを言っているのに、三回とも聞いていなかったようだ。

「ほんと。まさか三回とも聞いていなかったなんてね。いいよ。証明してあげる。彼に電話かけるね」

私はわざと微笑んでスマホを取り出した。

「もしもし? 颯太? ちょっとだけいい?」

「いいけどどうしたの?」

はい、自分で聞いて、と私は藤城くんにスマホを渡した。

「え、えっと、茜ちゃんと付き合ってるってほんとですか?」

「ほんとだけど、なに? どうしたの? てか誰?」

彼の声からはっきりと戸惑いが伝わった。藤城くんも慌てて名乗る。

「あ、茜ちゃんと同じクラスの藤城って言います……」

「あ、名前は知ってる。え? なんでそんなこと聞くの? しかも茜のスマホから?」

「あ、えっと……」