第3話

仲良くしてくれる結城くん
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2021/06/09 11:00
「ねぇ、そういえばさ。あの本、読み終わった? あの、あれ! 前、話してたやつ!」

あれから彼は、なんとなく私の近くで積極的に話しかけてくれるようになった。

「もしかしてナイトオブ・ザ・ホテル? 読みたいって言ってたでしょ? 読み終わったよ、ほら」

結城くんは私が差し出した本を見て目を輝かせた。私の愛読書の一つで、有名な作家さんの作品だ。

「あ、それそれ! ありがとう!」

「どういたしまして。確かに面白いけど、そんなに早く読み終えようと思わなくていいからね。3か月後くらいに返してくれれば」

「そんなに借りていいの? まあでも、読み終わったらすぐ返すね!」

彼はスキップする勢いで自分の席に戻って、さっそく読みはじめた。嬉しい。

「おはよ、茜」

「あ、おはよう優奈」

「茜。あのさ……、波奈のこと、応援してるんだよね?」

いつもの優奈とは、何かが違う。表情も強ばっているし、どこか不安げだ。

「もちろん。親友の恋を応援しない人なんていないよ」

あわてて少しだけ口角を上げた。いわゆる作り笑いだ。気づかれてないといいけれど。

「そうだよね? 良かった。最近、結城くんとよく一緒にいるから。あんまり近づきすぎないでよ?」

「うん、わかってる」

まあ、そうなるよね……。当たり前だよね……。親友が好きな人に、別の人がベタベタしてたらそりゃそうなるよね。

……でも、やっぱり悲しい。

「……やっぱり、好きなんだ……」

空だけが青く、清々しかった。

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