「私は言った」
「彼女じゃなくて私が本物だったら良いのにと」
『あたしは言った』
『お前が本物だったら良かったのにと』
『…ごめん』
「許さない、絶対に」
「私は」
「お前の人形じゃない」
あぁ、今日も寝覚めが悪い。
だけど
慣れっこだから、
何時になれば夢から覚めるのか。
もしかすると、この世界事態夢かもしれない。
それならば、覚めなくて構わない。
嗚呼、どうか、どうか。
夢で、あってほしい
嗚呼、どうか、どうか。
夢が、覚めないで欲しい
彼女は笑っていた。
私を無視して、笑っていた。
私も笑っていた。
任された仕事の為だけに笑っていた。
愛想の「私」と
本物の「あたし」。
きっと分かり合えない。
どうか、どうか。
分かり合えます様に
どうか、どうか。
私があたしに負けません様に
だけど だから
私は あたしは
今日も 今日も
貴女を お前を
「殺める」 『助ける』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!